５９話 ページ11
「で、何か言いたいことは？」
「スミマセンデシタ……」
正座をしてガクリと項垂れるアタシを眺めて、目の前で仁王立ちしている日本号は苦い顔のまま渋々頷いた。
朝餉を食べ終わった後に日本号に怖い笑みで呼び出されて着いていけば、鶴丸と一緒に正座で長説教…隣の鶴丸はもう足のツラさが限界なのか、若干震えて笑みが引き攣っている。
アタシはまだ大丈夫だったが、飲み疲れて眠ッちまう位には酔いが回っていた頭に、日本号の声は響いた。
だが、何時までもグダっているわけにも行かない。顔を洗いなおして、薄く化粧を施した。唇にグロスを塗れば、何時もの血に濡れたような紅になる。日本号に、一番映えていると言われた日から同じ種類のグロスしか使ってない。
昔の事を思い出しては、懐かしいモノだと少し浸っていた。
「まさか、近侍に怒られる審神者を見る日が来るとは思いませんでしたよ。お早うございます」
「…うぇ、アンタ見てたのかい…はい、お早う、宗三。…お小夜たちはどうなんだい？」
塗り終わったソレをポーチに仕舞い乍、昨日お小夜の居た木の下へ歩を進める。道中、廊下で外を眺めていた宗三に声をかけられた。
どうやら、日本号から説教されていた部分はばっちり目撃したようで、呆れたような声色がオプション付き
「お小夜は、人間の元に就く位なら刀解が良いと。僕としてもそれは嫌なので…説得はしていますけど。後は時間の問題です」
「むゥ……刀解のほうが良い、か…其処迄とは…ね。まぁこれが現実だ。しょうがない。アタシも嫌われている以上下手に接触できないもンでねェ…」
「いえ、別に。貴方は気に病まないでいいです。……僕達の問題ですし。では」
そそくさとその場を離れる宗三の背中は少し悲しそうに見えた。
･･････そりゃ、そうか。この世に顕現されて劣悪な環境で死線をくぐって来た兄弟が「死んだほうが良い」というのだから。
何とかして少しでも「生きたい」と思う気持ちを持たせることは出来んかねェ…アタシの事、人間の事は嫌いでもいい。
でも死ぬということは、その後起こりうる幸せを全部ドブに捨てるのと同じことだから……
そう思い乍木の肌を撫でて見上げればあることに気付いた。
「……この木は確か…」
「柿ノ木、ですね。」
落ち着きの混じる凛とした声が響いた。
振り向けば、そこに居たのは二人の刀剣
「数珠丸恒次……と、日本号！？」
名前を呼ばれた数珠丸はほんのりと口元に笑みを携えた気がした。
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病蛟(プロフ) - 勇者の人さん» お褒めの言葉をいただきありがとうございます…自分自身も楽しみ、かつ読者にも楽しんで感動して頂けるような小説をモットーに書いていますので、とてもありがたく思います。体を気にかけていきつつ投稿させていただきますので楽しみにしていてくださると幸いです。 (2021年9月22日 21時) (
レス) id: 1220734e66 (このIDを非表示/違反報告)
勇者の人(プロフ) - 文章が綺麗でとても読みやすく、読んでいて感情が揺さぶられたりと素晴らしい作品ですね。応援しています、これからも無理しない程度に頑張ってください。 (2021年9月22日 2時) (レス) id: 0ba614db75 (このIDを非表示/違反報告)
病蛟(プロフ) - もっちーさん» 一期一振に関する誤字を教えていただき有り難う御座います。修正作業に取り掛かります故…これからもこの作品をどうぞよしなに、楽しめるような続きを投稿させていただきます。 (2021年9月11日 22時) (レス) id: 1220734e66 (このIDを非表示/違反報告)
もっちー(プロフ) - はじめまして！続き楽しみに待ってます！！それと一期が一護になってます! (2021年9月11日 19時) (レス) id: 5828451b09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：病蛟 | 作成日時：2021年8月18日 23時
