【アイナナ】 vale 9 (ページ7)

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虎於くんの今の彼女を知らないから、大丈夫だよ！と気軽に言えるわけでもなく、だからと言って今の彼女なら大丈夫そうか、とか踏み込んだことを聞くのは気が引ける。

『虎於くんも苦労してるんだねぇ･･･』

腕組みをして、うんうんと頷くと虎於くんが困ったように笑った。

「そうでもないよ。色んな面で恵まれてるし」
『寂しいんでしょ？おねーさんは分かったよ』
「寂しくはない」

ポンポンと慰めるように肩を叩くと、苦笑いを返してくる虎於くん。

雰囲気が軽くなったところで、また次回、と、おいとますることにした。

･

9月に入った、次の家庭教師の日の朝。
虎於くんは既に学校が開始されているから、夕方に家に行けば良いので、のんびり起きてのんびり家で過ごす。

友達は働いてるし、弟は大学の友達と遊びに行ったし、今私は外出する理由はなかった。

朝食を食べながらテレビを見る。
ニュースやエンタメなどの紹介などをする、いわゆる情報番組だ。

「CMの後は、ちょこっとピックアップのコーナーです」とMCの人が言っている。

食べ終わって、シンクに持っていこうと食器を重ね、立ち上がった時だった。

「知られざるアーティストを、今日もちょこっとピックアップ！今回は、デビューしたてのアイドルデュオ、Re:vale！」

『え･･･っ』

CMがあけた途端にテレビに映ったのは、百瀬くんと千さん。
Re:valeだった。

運ぶはずの食器をそのままに、吸い寄せられるようにテレビの前に座る。

百瀬くん、髪の毛染めてる･･･？
爪もマニキュア塗っていて･･･
ちょっと痩せた？

たった4、5ヶ月前に会ったきりなのに、懐かしさと切なさが胸を占めた。

つつ、と人差し指でテレビをなぞる。
その指がテレビの中の百瀬くんの頬に重なった時、見えたものに目を見張った。

『これ･･･』

自分の腕にあるブレスレットを眺める。
瑠璃と色違いのお揃いで作ったものだ。
ーー百瀬くんと別れたあの日、どこかに行ったパワーストーン。

またテレビの百瀬くんの耳に注目する。

百瀬くんの耳にあるピアスらしきものは、私がなくしたパワーストーンと同じように見えた。

『いや、まさか･･･』

そう思いつつ、もしかしたら百瀬くんのポケットとか入ったのかも、と思った時を思い出す。

いや、そんな都合の良い事があるはずない。

ーーでも、勝手に自分のパワーストーンの欠片だと、思ってる分には良いよね。

そう思い直して、テレビのRe:valeに再び目を向けた。