10 (夏祭り) ページ11
明日を終業式に控えた、じんわり汗が肌にまとわりつく日。
百瀬くんに勉強を教えるのは2回目だ。
高校は基本的にバイトは禁止。
特に働こうという概念なんてないから、タダで教えてもらうわけには！って言う瑠璃のお母さんには、気にしないで下さいって言ったのに･･･
『何かすみません･･･お菓子用意してもらっちゃって･･･』
「いいのよ。瑠璃も教わってるのにこっちが申し訳なくて」
そう。
何故か瑠璃も苦手克服だとかで遡ってやると言うので、参考書を一緒に選んで買った。
基本的に百瀬くんを教えるのが主だけど、瑠璃が参考書で問題に詰まったものを私の手が空いた時に教えていた。
まあ高2の問題と中3までの問題とでは、結構違うから切り替えできるけど。
だから瑠璃のお母さん、すごいかしこまっちゃって。お菓子やケーキを差し入れしてくれる。
とりあえず2学期の中間までだから、気にしなくてもいいのに。
夏休みの宿題もここでやることになりそうだなーなんて思ってると、百瀬くんがバーっと両腕をテーブルに伏せた。
「出来たーー！！」
百瀬くんからノートを受け取って、次に会う時までの宿題･･･という名の復習と予習を数ページお願いする。
「Aさん、姉ちゃんと明日夏祭り行くんだって？」
『うん。妹も一緒だよ。弟が息抜きって言ってた』
丸付けしながら、喜んでた弟を思い出してフッと笑みがこぼれる。
息抜きなんて言って、行きたいだけだよねあの子。
「そうそう。だからAと妹ちゃんとデート！いいでしょー」
瑠璃が手を止めて、ニヤッとした笑みを浮かべた。
デートって･･･普通に女子だけで行くだけなのに。
まぁこういう事で笑顔になってくれる瑠璃は可愛いけど。
百瀬くんが心底羨ましそうに瑠璃を見た。
「いいなぁ･･･オレも息抜きしたい･･･」
ノートに書いてある最後の問題の答えを丸して顔を上げる。
『ご両親が良いって言うならいいよ。全問正解だし。復習予習さえやってれば』
「マジ！？」
『うん。サッカーもあるんでしょ？大変だけど息抜き大事』
真面目な顔で返すと、百瀬くんが笑顔でガッツポーズをした。
「母ちゃんに聞いてくる！」
「え？私たちと行くの？」
「友達に話してみる！」
笑顔で部屋を出ていった百瀬くんを見送って何となく瑠璃に目を向けると、何故かホッとしたように息を吐いてる。
良いってー！と喜びの声を上げる百瀬くんに意識がいって、明確に気にすることはなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 242人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミズ ミズ(プロフ) - KUROさん» コメント励みになります！ある程度の流れは決まっているのですが、セリフや行動にすると自分の他作を彷彿とさせないのが難しく更新が遅くなってしまってごめんなさい(_ _;)頑張ります！読んでいただいてありがとうございます！ (2021年11月23日 0時) (
レス) id: 7a55b8132b (このIDを非表示/違反報告)
KURO(プロフ) - 本当に読んでいて楽しくなれる作品だと思います！更新待ってます！ (2021年11月22日 21時) (レス) id: e464551ebb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：miz | 作成日時：2021年11月11日 13時
