【アイナナ】この道の先に。 (ページ38)

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一度しか会ったことなくて、そんなに話したわけじゃない関係だから、簡単に言えない事情だろうと判断してくれてる。

私の立場になってくれてる。

『･･･はい。大家さんと今の職場の店長さんは知ってます。さっきの人の事は直接知らないけど、そういう人がいることは。』

簡単に出来る事じゃない。
それを自然に出来る人なんだ。

「ならお節介かもしれないけど、事情を話して、外出時は誰かと一緒にさせてもらう方がいいと思うよ。」

『ありがとうございます。心配してくれて。』

笑みがこぼれると、十さんも少しホッとしたように笑った。

「じゃあ、気をつけてね。」

十さんが手を振ってくれる。

気づけば駅。

『あの、さっきの人のことは聞かないんですか？』

「無理に聞こうとは思わないよ。□ちゃんも知らないなら尚更、俺が知って良い事じゃないと思うから。･･･話したいと思ってくれるなら別だけどね。」

【本当に･･･温かい人だな･･･】

『先輩には･･･全部はきっと言えないかも知れないけど、話します。もう、ここら辺に来られないと思うから、理由言わな･･･』
「そうだね。無理しないように頑張って。家に着いたらラビチャしてくれると嬉しいな。」
『あはは。はい。』

笑顔で返してICカードで改札を通る。
振り返ってお辞儀をすると、笑顔で手を振ってくれた。

階段をのぼる時、なんとなく改札の方を見たら、まだ十さんはいた。

【あれ？帰らへんの？】

首を傾げながらホームへ行って電車に乗って、自転車でコンビニ経由でアパートに戻った。

A着きました!今日はありがとうございました(^^
十良かった。ラビチャありがとう。

こちらこそ、というスタンプを送って、お弁当を食べる。

少し考えて、もう一度スマホを手に取った。

A先輩、ちょっと話したいことがあるんで、いつか時間作ってもらえますか?
Aあ、場所は、出来れば個室のあるお店で。

私の部屋、綺麗とは言い難いし。

片付けて先輩来ても、料理とか大したもん作れんし。
てか先輩に私が作ったの食べてもらうなんて、怖い。
プロでもないのにめちゃ美味しいし。

先輩からの返信は、夜遅くにあった。

□いいよ!空いてる日はねー･･･

会うことになった日は、先輩がRe:valeになるかどうかの結果がわかるライブの日が、間近に迫った日だった。