笑顔のキミが好き 【百】 26 （完結）

屋上の音楽　2 ページ32

正面玄関から出ると、マスコミの多さに驚いた。

「Re:valeさん、お伺いしたいことがあるんですが！百さん、大学の友人にコメントは？」

多数のマイクが向けられている中、１人の記者が言う。
百が口を開こうとすると、千が遮って、ないよ。と言った。

「ヤスさん！同じ事務所のAさんのせいで引退を決意したのは本当ですか！？」

『Aのせいなんて、一度も思ったことはありません。むしろ、今の私があるのは、Aのおかげなので。Aがいなきゃ、今の私はいません。』

これなら嘘でもないし、擁護も出来てると判断した。

「では千さん、以前組んでいた相方と、Aさんを見捨てて百さんとヤスさんと組まれたそうですが、罪悪感などは･･･」

千の眉間にしわが寄った。

「あるに決まってるでしょう。僕のせいで、２人とも怪我をしたんだよ。だけど、モモたちが支えてくれたんだよ。僕も質問していい？これは本当に、僕に聞かなきゃ、想像がつかないことだった？どうして、想像がつかないの？君の周りには、夢破れて傷ついた人は誰もいなかった？」

千の言葉に、マスコミの人たちが黙る。
みんな、それぞれに戸惑ってる表情をしていた。

「誰もいなかったなら仕方ないけど･･･。本当に辛いんだよ。ある日、突然、自分の全てだったものが消えるんだ。どこに向かえばいいか、わからなくなるし、自分にも、世界にも、期待ができない。僕も、モモも、真っ暗闇の中にいたんだよ。僕らに手を差し伸べてくれたのは、Aだけだ。傍に寄り添って、ずっと近くにいて。･･･僕らにとっての光なんだ。」

【千･･･】

そんなことないよ。
私にとって、Re:valeは、百は、千は、導いてくれた光だよ。

そもそも2人がいなきゃ、この世界で、前世の記憶なんて呼び起こされなかった。
出会いたいと、動いたりなんてしなかった。

出会えて、Re:valeになって、百と付き合って･･･いつしか、記憶がなくなっていって･･･
それでも、変わらないって、今の私を大事にしてくれる。

私の記憶がなくなっていくのが、本当は寂しいと思ってるだろう百も、変わらない笑顔で、大好きって言ってくれる。
千だって、曲の記憶がある私でも、変わらず接してくれる。

私にとっての光は、それでも傍にいてくれる、百と千だよ。

「やましいことがあるから、隠したいから、黙ってるんじゃない。口にするだけで、苦しい過去があるんだ。」

千はマスコミの方に向いて、ちゃんと想像してと言った。

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