笑顔のキミが好き【if･･･大神万理】2 (ページ37)

今日:3 hit、昨日:8 hit、合計:59,087 hit

19　～万side～ページ37

『当てはまらない･･･？』

Aが呟いてから椅子を立った。

『ごめん。ちょっと待ってて。』

寝室へ入ってくのを百くんと見送った。
百くんが顎に手を当てて、考えるように言う。

「当てはまらないなら、緩やかに記憶が消えていくって事ですよね。どれ位の時間でどれ位がなくなるのか分からないですけど。」

「そうだね。なくなり方にも興味はあるね。ぼんやりと全体的になっているのか。ただ今回のツアーは、部分的に残ってるんだから、全体的にぼんやりとっていうのは違うよね。」

「そうですね。とすると、やっぱりバンさんが書いてるように、心の成長や特別な出来事も関係あるのかもしれません。」

２人で、うーんと言ってると、Aが寝室から出てきた。
ホッとしたように記憶がなくなってる部分は少ない事を言った。

【やっぱり怖いんだ･･･】

記憶がなくなるのが。

自分の記憶として認識してたら怖いけど、未来に対して何とか出来なくなるのが怖いんだもんな。
なんとかしてあげたい。
でも、Aの気持ちの問題だ。

「A、バンさん。話してくれてありがとうございました！」

百くんが嬉しそうに笑って言って帰っていった。
Aにファイルを差し出した。

「じゃあ、このファイル置いていこうか？」

『ううん、置いてたら誰か見ちゃうかもしれないからいい。情報として日記帳に書いておく。ありがとう、万。』

「ん。また何かあったら言って。」

『うん。何もないこと祈っておいて。』

ファイルを鞄にしまって聞いた。

「何もない方がいいのか？やっぱり。」

『え？』

「人は心の成長なくして、高みへはいけないよ。そこで終わってしまう。･･････Aだって分かってるだろ？」

まっすぐAを見ながら言うと、Aは気まずそうに視線を落とした。

「Aは記憶に囚われてるけど、俺としては気にしないで、そのままのAでいて欲しい。･･････勿論、記憶があるのが嫌だとは言わないよ。それがなければ出会えなかったから。でも･･･縛られずに、Aの人生を、Aだけのために過ごして欲しいと思うよ。だから、俺としては記憶は消えてもいいと思う。」

ずっと思っていた事だった。

Aは未来を知っているが為、未来を気にしすぎて身動きが取れなくなってしまう事が多々ある。
未来を気にしないで、今を一生懸命生きて欲しい。
それが、できる人だと思ってるから。