生活の記憶 ページ8
朝起きてご飯を食べてる時に百が言った。
「最近、全然オレの家来ないね。ユキの家は行くのに。ツアーもあるけどさ、それ以外でも･･･何で？」
難しい所かな。
百のマンションはツクモ関係者の人が多いから、なるべく見られたくないのが正直な所だ。
『百の家に女の人が入ってるって情報がツクモに流れないか心配なのが本音。』
「ユキはいいのに？」
『千の所にはヤスで行ってるでしょ？作曲してる体裁なら平気。百はヤスと仕事以外の付き合いない設定だし。』
百がそうかーと唸りながらパンを口へ放り込んだ。
「ま、いっか。Aとイチャイチャ出来るなら。」
『イチャイチャ･･･』
「ん？･･･照れてる？えへへ、かわいー。」
百の破顔に、やられる。
私の顔は真っ赤だ。
「そういや子供とか、なんか忘れてるって言ってたの思い出した？」
『え？･･･いや、思い出してない。』
当日に、うんうん唸りながら考えたけど答えは出なかった。
「前世の子供は？言ってたじゃんか。エレクトーンとお菓子と子供とアイナナだけ覚えてるって･･････A？」
百が不思議そうな顔をする。
私の顔から一気に血の気がひいた。
【子供、お菓子･･･】
エレクトーンは覚えてる。
よく弾いた。
･･･でも、これは私の記憶？
前世の記憶？
え？アイドリッシュセブンの記憶は？
急いで日記帳の鍵を取って寝室へ入る。
「え？A？」
一冊目。
うん、“私”が知らない事も覚えてる。
二冊目。三冊目。
大丈夫。知ってる。
『百。』
寝室の入り口に百が立ってる気配は感じていて、振り向かずに言った。
『前世の“私”の生活の記憶が･･･前よりない。』
「え？」
『ゲームは全部ある。･･･なんで？』
いつから？
2年半位前から新しく思い出す記憶はなくなった。
その後、興味ある事と今回のツアーの主要部分以外は思い出さなくなった。
それ位だ。
でも前世の情報はある。
エレクトーンしてた事、パティシエだった事、旦那さんと子供がいた事。
でも前のように映像が頭に流れない。
足の力が抜ける。
ペタンと床に座った。
『どうしよう。アイドリッシュセブンの記憶もなくなったら･･･』
怖い。
なんで？
頭の中がグルグルする。
めまいがする。
百の匂いが後ろから、ふわっと香った。
抱きしめられていた。
「大丈夫。いつなくなっても良い様に日記帳書いたんだろ？」
『うん･････』
ポロポロ涙を流す私が落ち着くまで、百は抱きしめてくれた。
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作者名：miz | 作成日時：2019年5月16日 5時
