認めなよ。 3 ページ39
リビングのドアを思い切り開けた。
「･･･ッ、それ以上ひどいことを言わないで･･･。･･･俺が間違ってても･･･」
『ヤマさん！』
大「A･･･」
ヤマさんが千を壁に追いやって、首を締めていた。
【うわ･･･】
背筋がゾッとする。
何、この目。
本当にヤマさんなの？
･･････いや、役が憑いてるんだ。
こんなヤマさんと一緒に演技で張り合ったら、のみこまれる･･････
本能なのか金縛りのように立ちつくしてしまった私を見て、ヤマさんの手が千の首から滑り落ちた。
「･･･っけほ、けほ･･･。」
ハッとして千に駆け寄る。
『千、大丈夫！？』
「･･･っけほ･･･っ」
辛うじて首を縦に振る千。
首に巻くのは怖いよね。
取りあえず赤みを取るために冷やさないと･･･
濡れタオルを急いで作って千の首にあてる。
あとはヤマさん。
座り込んでるヤマさんの肩に手を置いた。
『カット、OKだよ。･･････ヤマさん？』
「･･･けほ･･･」
ヤマさんの目が、さっきの怖いのから、少しずついつもの目に戻ってるのが分かる。
ヤマさんの肩の力が、ゆっくり抜けていくのを感じて、手を離した。
「･･･あ。俺、凄い汗･･･最悪な夢を見た･･･あれ？A、来たのか？」
『さっきね。千の顔色の悪さ、分かる？』
「え？･･･どうしたんですか･･･。･･･まさか･･･スタジオで、歌いすぎたんですよね･･･？」
千と目が合う。
気づいてないんだよ、ヤマさん。
自分がやったこと、本気で夢だと思ってる。
【そんだけ追いつめられてる。･･････百が言う通り、普通じゃない。】
千も、それに気づいたのか、疲れたように息を吐いて、そうね、と言った。
・
メイクを落とした後、千が落ち着いてから食事をする。
千が肉を焼いてくれた。
『ヤマさんも食べる？』
千「それ、A用の肉･･･」
『じゃあ問題ないね。はい。』
半分のお肉をヤマさんにあげる。
千「A用･･･」
『私のなら、どうしようが勝手でしょ？』
「あ･･･サンキュ。」
「一人焼き肉程、色々食べれはしないけど。」
言って笑うと、ヤマさんが力なく笑った。
うん。
どんな笑顔でも、今は少しでも笑った方がいい。
無理まではしなくていいけど。
「A、食べ終わったらスタジオ。」
『うん。』
「ベースだけ作った楽譜、チェックして。」
『うん。』
苦笑いしながら、食事を終えて片付けた。
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作者名：miz | 作成日時：2019年5月16日 5時
