4.ばったり ページ6
「あ、はい。天月です。僕のこと知ってるんですね」
嬉しいなぁと照れ笑いする彼を、私はただ呆然と見ていた。
え、うそ、天月さん?あの?…いやいやないない。私なんかが、こんなばったり天月さんに会えるわけがない。これは夢か?ああ夢か。ならばすぐに覚め…
「あの、どうされました?」
「ひゃいっ!?」
考え事をしているときに突然声をかけられ、変な声を出してしまう。うう…恥ずかしい…。
…ん?夢じゃない?…ということ…は?
「あ、あの、ホントに天月さん…なんですか?」
「心配しなくても、本物の天月ですよ」
私の様子を見て困惑しながらもにっこりと微笑んで答えてくれた。
「マジかぁ……」
「え?」
「こんな形で会いたくなかったぁぁぁぁ!!」
「ええっ!?」
-------❁ ❁ ❁-------
「先程は本当に失礼いたしました…」
「いやいや、大丈夫ですよw」
私が無礼なことを大声で叫んでから少し経ち、今は天月さんと向かい合わせで座っている。
「あの、さっきのは会いたくないっていう意味じゃなくてですね…。」
「分かってますよ。でも良かったら意味、教えてくれませんか?」
「は、はい。えっと、私、歌い手さんが大好きなんですよ。好きすぎて私も歌い手やってるんですけど…。だ、だから私がもっともっと有名になって、なるべく皆さんに近づいてから堂々とお会いしたいなぁと思ってて……」
昨日の生放送みたいに最後は自信がなくなって声が小さくなってしまう。天月さん、どう思ったかな?と思いチラッと見ると、天月さんは少し驚いたような顔をしていた。
「そ、そんなこと思ってたんですね…。」
「…呆れました?」
「いや、違う違う!!逆に凄いなぁって思いました!」
「え?」
「だって好きな人に会うために自分を高めるって本当に凄いですよ!僕だったらその発想すら出てこないかも…w」
「あ、ありがとうございます…」
やばいやばい
私、天月さんに褒められてる。信じられねぇ。あ、今日が命日ですか。そうですか。
こんな風にまた考え事をしていたら、天月さんが私に質問をしてきた。
「そういえば歌い手してるって言ってたけど、名前はなんですか?」
「…多分知らないと思いますけど『如月』です」
「え?」
今度は天月さんが固まる番だった。
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作者名:みずドラ | 作成日時:2018年6月16日 0時