19.奇遇 ページ21
そら兄の言葉に聞こえなかったフリをして、走って会社の中に入る。中では田中さんが待っていた。
「こんにちは、お久しぶりです」
「あ、こんにちは。人混みは大丈夫でしたか？」
「はい…おかげさまで…」
「では早速ですが、また部屋でお待ちいただいてもよろしいでしょうか？」
「はい！」
田中さんが私を部屋まで連れていってくれる。その途中のことだった。
「あ！A！！」
いきなり私のことを呼ぶ声がし、声の主を探す。
すると、こちらにブンブンと手を振っているさかたんがいた。
「さ、坂田さん！？」
「奇遇やなあ。Aもレコーディング？」
「レコーディングというか打ち合わせです」
「……あ、如月さん、部屋で待つよりお話をされていた方がいいですか？」
田中さんが気を利かせて話をして待つという提案をしてくれた。
「え、いいんですか？」
「はい、全然大丈夫ですよ。時間になったら呼びに来ますね」
そう言って田中さんは行ってしまった。優しい…。
「なあなあA！アルバムの打ち合わせなん？」
「そうですよ。坂田さんは何のレコーディングなんですか？」
「浦島坂田船のアルバムのレコーディング！」
え？浦島坂田船？…てことは…。
「せや！向こうにうらさん達がおるから会いに行こ！」
「うええ！？」
さかたんは私の手を引き、浦島船がいるという方へ走り出した。
-------❁ ❁ ❁-------
「うらさーん！」
「ん？坂田？」
私を引っ張ってきた坂田さんを浦島船らしき3人が不思議そうな目で見ている。
「如月さん連れてきたでー！！」
「「「えええ！？」」」
さかたんがそう言うと、3人は驚いてこちらに近づいてきた。
すると、うらたさんらしき人と目が合う。
あ、あの人…やっぱり…！！
「…A？」
そう聞かれて思っていたことが確信に変わる。
「やっぱり…浦田先輩？」
聞き返すと、彼の顔がパアッと明るくなる。
「久しぶりー！！何年ぶりだ！？」
「えっと…2、3年ぶりくらいですかね…」
「けっこう経つなー！てかA、印象変わったな。髪伸びたから？」
「そうですね…ちょこちょこ切ってたりはしてましたけど」
浦田先輩と楽しく話していると「あのー」とさかたんが話に入ってきた。
「2人…知り合いなん？」
「そういえば言ってなかったな。俺とAは昔のバイト仲間だよ」
「私が新人だった時、浦田先輩に色々とお世話になったんです」
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作者名：みずドラ | 作成日時：2018年6月16日 0時
