お宅訪問 ページ13
左馬刻の事務所を後にし、バイクにエンジンをかけていると、背後から革靴の鳴る音が響き後ろを振り向くと見慣れた姿があった。
「入間さんもお帰りですか。」
「えぇ、話も済んだのでね。それで、結構いい時間ですけど貴女、ここから家までどのくらいかかるんですか?」
「…?ニ十分くらいかと、それがどうしましたか?」
小首をかしげて尋ねると、銃兎は呆れたように息を漏らす。
「どうかしましたかって…未成年がこんな時間まで外出しているのを見逃せるほど私は落ちぶれてはいませんよ。」
「……まさか、補導ですか、」
「えぇ、そのまさかです。」
「ま、待ってください。私保護者なんていませんよ?」
「御祖母様とはもう暮らしていないのですか?」
「祖母は施設のほうに、」
あの事件があってからAは祖母に引き取られた。祖父はもうすでに他界していたので、二人で日々を過ごしていたのだが、昨年を機に祖母は施設に入った。最近生活が赤字傾向にあったのも施設の入居費が理由である。
「そうでしたか。それなら私が保護します。」
「え?」
「私の自宅はここから十分ほどです。今晩は泊めてあげますから、大人しくついてきなさい。」
「もし、逃げたら?」
「しょっぴく。そして御祖母様に連絡します。賢いあなたならどれが賢明な判断か分かりますよね?」
「……お世話になります」
「わかればよろしい、車で前走るのでついてきてくださいね。」
***********
大人しく黒の車の後をついていくと、十分かした後にいかにも高そうなビルの駐車場で車が停まる。同じようにバイクを停めると、銃兎が小さく手招きをするのでヘルメットを外して縛っていた髪をほどくと濡れ羽色の髪が潮風にふわりと揺れた。
「…お邪魔します」
「はいどうぞ」
モノトーンで統一された部屋は掃除が行き届いており、温かな色味を持つ間接照明が黄昏を思わせるようにほのめいていた。促されるようにソファーに座れば微かに香る煙草と香水が鼻腔を燻る。
「珈琲淹れますけど、砂糖とミルクは?」
「一つずつでお願いします」
分かりました、という声が聞こえた後に珈琲特有の香ばしい香りが漂う。そして待っている間にスマホを確認すると昼間までともに話していた彼女から不在着信が来ていた。それを追うように"手が空いたらすぐに連絡しろ"と一文。
「すいません、少し電話してきますね」
「ここでも構いませんよ」
「それならお言葉に甘えて」
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雪@そらなー - 鵠さん» 作ったよ〜!裏切り+愛=呪いで検索かけたら出ると思う! (2018年12月12日 20時) (レス) id: a70a7db5f1 (このIDを非表示/違反報告)
鵠(プロフ) - 相澤雪さん» ありがとう!もし作ったら教えてね (2018年12月7日 22時) (レス) id: c75e48906d (このIDを非表示/違反報告)
相澤雪 - めちゃめちゃ参考になった!更新頑張って!! (2018年12月7日 15時) (レス) id: a70a7db5f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鵠 | 作成日時:2018年12月3日 22時