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少しの我儘
及川さんは自分の話をし始めてくれた


「…俺は、天才なんてものじゃなかったよ」


私は華々しい過去を想像していたけど
そんなことは無かった

及川さんも私と同じ、報われない存在
だけど私と違うのは、及川さんは折れなかったってこと


「こんなのしかないけど満足してくれた?」

「…聞いといてなんですけど、私なんかに話してよかったんですか…?」

「Aちゃんは包み隠さず教えてくれたし、俺もAちゃんには話せると思ったんだよ」


寝ようか、と言ってからもう1時間は経ってしまった
だけど不思議と眠くない、寝たくない


「こんな話したの、Aちゃんが初めて」

「え?」


柔らかい笑顔で、じっと私を見つめてくる
暗さも手伝ってか、やけに大人っぽく見えてしまうその表情に目を逸らした


「俺の話も、内緒にしててね?」

「もちろん、です」


2人だけの秘密みたい
それだけでなんだかワクワクしてしまう

大きな欠伸をした及川さんは、そろそろ寝ようとまた言った


「…?」

「ん? 嫌?」

「あ、いえ、」

「寝られるまでこうしててあげる」


私の背中を、とん、とん、とゆっくりさすってくれる
慣れないその感覚に少し戸惑ったけど、ゆっくり睡魔はやってきて…


「おやすみ、A」

「…おやすみ、なさい」


及川さんの優しい笑顔を最後に、私は暖かさに包まれて眠りについた



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観月(プロフ) - アキさん» 大丈夫ですありがとうございます!!!そう言っていただけるともっと更新頑張れます…! 本当にありがとうございます!! (2020年10月7日 20時) (レス) id: d67a3f96a5 (このIDを非表示/違反報告)
アキ(プロフ) - コメントさせてもらっても大丈夫でしょうか。このお話大好きで更新通知が来るたびワクワクしています^_^ありがとうございます (2020年10月7日 16時) (レス) id: 91cac48c4e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:観月 | 作成日時:2020年10月4日 17時

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