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「怪我なんて滅多にしないのに」

「俺も人間だし怪我くらいするよ」

「正セッターの主将が何言ってるんですか」


先生は運悪くすれ違いで会議
湿布とか使っていいから処置してあげて!
の一言で出ていってしまった

湿布を貼って、テーピングをして


「…岩ちゃん」

「え」

「岩ちゃん気付いてたよ」

「…そう、ですか」


ああ、全部バレたんだ
好意を寄せていたことも
その恋が実らないと知ったことも


「私、バカみたいですね」


小さく呟いた一言は
誰に拾われるわけでもなく空気に溶けていった


氷袋を作るためにがしゃがしゃと乱暴に氷を掻き出す音とか
袋に入れるために捻った蛇口の小さな音とか
グラウンドから聞こえるサッカー部の掛け声とか
微かに聞こえる吹奏楽部の演奏とか


些細な音が私の心の傷に塩を塗る


いつもチャラチャラしてる及川さんは
こういう時ばっかり何も言わなくて


やっぱり、どこにモテ要素があるか全然わからなかった


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作者名:観月 | 作成日時:2020年8月12日 17時

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