諏訪くんは普通じゃない２

43話｢文化祭｣ ページ3

文化祭当日｡

昨夜は柄にもなく高揚感が高まってしまい､あまり寝れなかった｡
けど､そんなことを気にしている余裕はないと言わんばかりに､校内はお祭り騒ぎ｡

開場は９時からの予定なので､あと１０分ほどで入場が開始される｡

さっきクラスのみんなにそう伝えたところ､｢急げ！｣｢ヤバいぞ！！｣と一層騒がしくなったのは言うまでもない｡


でも､こういう感じは嫌いじゃない｡

思わず口を緩めていると､隅で進行表を確認している諏訪くんを見つけた｡進行表の確認をしておかないと｡


｢諏訪くん､開場後の動きについてなんだけど･･･｣


『っちょ､はっ！？･･･じゅ､ジュース！飲み物､ない！！！』




え？


あわてた声は､教室に置いてあるクーラーボックスの近くから聞こえた｡



･･･飲み物が､ない？




｢･･･っえ｡｣





人だかりのできている方へ走る｡


ないなんて､そんなはず･･･



『あっ実行委員！これっ･･･飲み物が！！』



女子生徒が差し出したクーラーボックスの中には､




｢･･･なんで･･･？｣




確かに入っていたはずの飲料が､

一本も入っていなかった｡



『お､おいどういうことだよ！？担当誰だ！？』


『あ､あたしたちだけど､ちゃんと買ったって！！ねえ！？』


『そーだよ､クーラーボックスに入れたとこ､二ノ瀬さんだって見てたよね！？』


｢う､うん｣




そうだ､確かに見た｡実行委員として本数の確認もした｡柑橘系のジュース１Ｌが１０本､コーヒーの紙パックが１０本､サイダーが１０本､大容量のクーラーボックスに､ところ狭しと入っているのを｡

見間違いではないことは､ここにいる担当の女子生徒たちも証明できる｡
担任に領収書だって渡している｡


･･･けれど実際､今ここに飲み物は一つもない｡



『どーすんだよ､あと５分もしないで開場すんだぜ！？』



焦ったような声に､我に返る｡

動揺している場合じゃない｡飲み物を買いに行っている時間もないし､インスタ映えメインで考えていたから軽食は種類も量も少ない｡


『マジでヤバいって！』

『外見て外！校門のとこ､あんな人いんじゃん！どうすんの！？』



クラスメイトの声が､余計に焦りを煽る｡

どうしたらいい､どうにかこのままカフェを開けたとしても､カフェとして出せるものがない｡

どうしたら･･･､






諏 ｢俺が行く｣








･･･そう言ってクーラーボックスを持ち上げたのは､他でもない諏訪くんだった｡

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