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あれから数十分後。
荒波のように押し寄せた事実の洪水に、鴎外は少し悩んでいる様子を見せた。
今己の足元にいるのは、生き残っている中級構成員、幹部だ。
黒蜥蜴の銀、広津、立原。首領直下の実働部隊…芥川、樋口。そして、幹部の紅葉と中也。
ドレミーによって命の別状がない程度に治癒された彼らは、傷だらけなものの命が脅かされる心配はなかった。
彼女は、全て話切った後早鬼と八千慧を連れて夢の世界を閉じ、こちらへと我々を輸送した。
細かい手順は判らないものの、かなりの大物なのだろう。
鴎外は静かに彼女のセリフを反芻する。
───でも、この幻想郷とヨコハマとの対決の大一番、両者とも互いにダメージを与え利益をもぎ取る形になりましたね。
───片や幻想郷は、ヨコハマの巨大派閥であるポートマフィアを凍結させたのに対し、
ヨコハマは彼ら黒幕の情報を掴み取った。
実に、見ている側としては面白い展開です。
驪駒さんも、他の構成員との交戦で体力を消費していたからこそ中原さんと相討ちになったのであって、どちらかが欠ければ成功しなかったでしょう。
吉弔さんも、尾崎さんが着実に霊力を削ったおかげで中原さんに手が出せなかったのです。
きちんと組織の長として、部下の功績を讃えてあげてくださいね。
(そのようなこと、夢を見せる程度の妖怪如きに言われずとも)
今やるべきことは一つ。
情報をいち早く探偵社と特務課に教えることだ。
これは仕様ということらしいが、一度夢の世界に入った人物に干渉した者は、記憶をすっぱり抜け落とされるらしい。
だから、特務課は突入したということも、警察に通報した近隣の住民も、存在を忘れているということになる。
つくづく便利な仕様だ、と苦笑をこぼした。
鴎外は静かに携帯電話を取り出す。
打ち込んだ番号は、旧き友人福沢のもの。
「───もしもし、福沢殿。
我々マフィアが、幻想郷に襲撃されました」
───────────────
一方、場所は変わり日本を飛び出て欧州の何処
存在ごと秘匿された異能刑務所「ムルソー」では、ドストエフスキーが囚われていた
「こんにちは、北欧の魔人さん」
そんな彼に、風変わりな来客が姿を表す
次回、この余白はそれを書くには狭すぎる第二篇「動き出した幻想」二部、続編は未定。
続報を待て───。
(これで一旦二篇は終わりとなります。
続きをお待ちくださいな)
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作者名:颯貴@きっちょー | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/MizuhasiSatuki/
作成日時:2021年7月18日 17時