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「私は中立です。
だから、私は幻想郷側として驪駒さんと吉弔さんを助けに迎え参りました」
そう言いながら、彼女は手に持っていた本をばさりと開ける。
そして、本から垂れ下がる青い紐性の栞を、開いたページにすっと掛けた。
その瞬間、本から閃光が溢れ出る。
「これは“夢日記”と呼ばれる、この世全ての夢が内蔵された日記です」
彼女が本からそっと手を離すと、本は空に浮かび静かに上昇した。
そして、直線上に上へと溢れ出ていた光は、そこを起点に360°グルリとばら撒かれる。
あまりの眩しさに鴎外が静かに目を細めた。
やがて、その光に満たされたその場は異世界へと姿を変える。
「!!
………異能世界か」
「その通り。ま、厳密には違うのですけど」
先刻までマフィアのビルにいた鴎外、中也、早鬼、八千慧、紅葉だったが、夢日記により一瞬で彼女の異能世界───夢の世界へと転移される。
地面という地面もなく、底の見えない青い空間に赤い十字が張り巡らされたその世界は、明らかに現実と乖離しているのは見てとれた。
「さて、私は中立ですので幻想郷を助けるのならばあなた方に利益のあることもしなければなりません。
鴎外さん、佳い情報と悪い情報……どちらを先に聞きますか?」
静かに問うたドレミーに、鴎外が目を伏せる。
「そうだねぇ……それでは、悪い方から頼むとしようか」
「判りました。ではこちらをご覧ください」
鴎外の答えを聞いた彼女は、パチンと指を弾いた。
そして、彼の前に一つの映像が映し出される。
それは───ポートマフィアビルの前に集まる、軍警の機動隊だった。
彼らを指揮するのは、異能特務課の対異能特別部隊だ。
そして、彼らにインカムから指示を出しているのは…………坂口安吾だ。
「今、あなた方のビルの前にあなたたちが
きっと、大きな物音を聞いて近所の方が通報したのでしょうね。
場所が場所ですし、特務課も駆けつけた次第でしょう」
そして、彼女は再度指を弾き映像を落とした。
「さて……………賢いあなたなら、それがどういうことなのか理解できたでしょう?」
にこりと穏やかに笑みを浮かべ皮肉を浴びせるドレミーに、鴎外は顔を歪めた。
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作者名:颯貴@きっちょー | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/MizuhasiSatuki/
作成日時:2021年7月18日 17時