73. ページ25
.
彼の手には、質量爆弾のブラックホール。
そして、今までと比でない重力。
その打撃が、早鬼の頭を勢いよく殴りつけた。
音を立てて早鬼が吹っ飛ぶ。
そこに追撃にかかるブラックホール二つ。
その二つをなんとか大弾で弾き飛ばし、肩で息をする。
その直後、二つの衝突の煙に紛れて姿を示す中也。
彼の深く深く重い拳を足で弾き、そのまま顔ごと顎を薙ぎ払う。
軽く飛ばされた中也は、動きを止めなかった。
「っな、頭をあれほど強打されれば意識は確実に落ちるはずだが───ッ」
だが、直ぐに切り替え彼を応戦する。
「こりゃあ……ッ、妖怪──否、神レベルじゃないか!!」
早鬼が中也を押しやりながら呆然と呟く。
本能のままに動く戰の獣は、六道の一つの畜生界最強と互角にやり合っていた。
.
静かに拳と脚が交差する。
互いに滴る血の汗。
もとより体を回復するために霊力を消費していた彼女は、霊力を節約しなければならないのもあり、加えて連戦の状況にある。
中也は、一気に早鬼を劣勢に追い込んでいた。
だが、汚濁にはタイムリミットがあるのもまた事実。
これ以上続ければ、中也の命が危うい。
「…………ッ、このまま泥沼では埒があかない!
一気に攻めさせて頂こう!!」
弾かれるように早鬼が空に飛び上がる。
「これが私の、真の本気だ!」
───【鬼形のかたち示せしもの】───
そして、彼女の雰囲気が変わる。
そして、彼女から溢れんばかりの霊力が吹き出した。
「受けよ!身に染みて感じよ!
我こそが最強最速の黒き神馬だ!」
そう叫ぶとともに早鬼がフルパワーの霊力を込めて突っ込む。
「うおおおおおおおおおらああああああああああああああっ!!」
中也も、迎え撃つように両手に質量弾を携えて迎え撃つ。
そして双方は、大きな音と煙を巻き衝突した。
壮大な破壊音が地を揺るがす。
ヨコハマ中の、並木に止まっていた鳥たちが音を立てて羽ばたく。
煙が薄れる。
両者の影が見える。
二つの影は……どちらも地に伏していた。
血を吐く中也。
傷だらけの早鬼。
この勝負は───両者引き分けとなった。
.
40人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:颯貴@きっちょー | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/MizuhasiSatuki/
作成日時:2021年7月18日 17時