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今ある全力を賭して、この黒馬に勝ってみせる。
心の中でそう決め、大きく距離を取る。
精神を集中させ、そのままその場所の雰囲気を神聖へと塗り替える。
「ほぅ……」
早鬼は感心したように攻撃の手を止め中也の出方を伺った。
「見ろ、神馬」
「これが、俺の全命を賭した
「───汝、陰鬱なる汚濁の許容よ。
改めて我を目覚ますことなかれ───」
……彼の体全体に、赤き力の紋章が姿を示す。
これぞ、彼の異能──「汚れつちまつた悲しみに」の、最終形態であり本来の力だ。
「…………おぉ」
早鬼は、彼の……異形の姿を見て感嘆の声をあげ、異能で吹き上げる風に飛ばされぬよう帽子を掴む。
彼女の額から、ちとりと汗が零れ落ちた。
「うおおおおらあああああああ！」
そして、中也は勢いよく飛び上がり、天井にあった巨大な換気扇を捥ぎ取り、重力を上乗せして早鬼に超音速で投げ飛ばした。
「ッ、これが貴君の本気だな！
どこまで保つか見せてもらおう！」
その言葉とともに、早鬼は赤い鱗弾を換気扇目掛けて撒き散らした。
だが、破壊の意を込めた鱗弾は鋼鉄の換気扇に弾かれかきんかきんと声を上げるのみ。
そしてそのまま、換気扇は早鬼のところへと突っ込んだ。
本来の換気扇ならば4〜6kgが主流だが、重力を何十倍、何百倍、何千倍と上塗りされた鉄の塊は一撃で致命傷を伴う。
だが、それに屈するほど早鬼は柔ではない。
いざ彼女に当たるというところで、彼女が上に黒い翼をはためかせ飛び上がる。
そして、迫り来る換気扇を上から振り下ろした脚でガッサリ縦断した。
彼女の純粋な怪力もあるが、彼女の能力の「比類なき脚力を持つ程度の能力」とのコラボレーションの蹴り技は、やわな素人が一度食らったら肋骨が4本真っ二つに折れるほど危険な存在。
今2度その蹴りをまともに食らっている中也であるが、汚濁をしている最中でも己の本能で次はないというのを理解していた。
だが、中也は今や本能に忠実に従う戰の獣。
彼女が換気扇をぶった斬ったその時には、彼女の背後に潜んでいた。
「うおらああああああッ！！」
「っま、しまっ…」
彼の手には、質量爆弾のブラックホール。
そして、今までと比でない重力。
その打撃が、早鬼の頭を勢いよく殴りつけた。
────
戦闘なので話の区切りらしい区切りがなく、毎回どこで区切るか悩みます。
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作者名：颯貴@きっちょー | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/MizuhasiSatuki/
作成日時：2021年7月18日 17時
