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「……………お前らが、俺の部下を殺したことは判ってンだよ。
仇、首を出したら許してやることもねェぜ」
「ふふっ……生憎と無理な注文ね。そこのかめ吉弔に頼みな」
「いやですよ私は！」
一応吉弔には念を入れて逃げない程度には痛めつけたつもりだが、実際は如何なるものか。
だが、本当に逆らう気を見せない限り今集中するのは目の前にいる此奴だろう。
だが、先手を食らっても平然としている驪駒にどこか違和感を覚える。
こいつは、もしかして本気を出していないのか？
その可能性に気づき思わず柄に合わない身震いをする。
今ここに太宰がいたら一生分笑い飛ばされるだろう。
だが、もし本気を出していないのなら、もし本気を出したのなら、自分は本当に勝てるのだろうか？
「……なァ、手前。まだ本気出してねェだろ」
静かに聞くと、一瞬ぽかんとした雰囲気が彼女から流れた。
「………ふふっ、まぁその通りだよ！
君のような普通に死ぬ人間如きに魂を曝す必要はない！
片鱗を見せることなく捻り潰して見せるさ」
余裕綽々飄々悠々とした驪駒に怒りが募る。
確かに俺らは実力主義だ。
ただ、こんなに命を雑物みたいに扱うコイツに、本気を出させず負けるのは癪だった。
「……おい、賭けをしねェか」
「おお、景気が宜しいこと。構わないよ」
「今から俺は本気を出す。
だから、手前も本気出せ」
静かに告げると、驪駒がぴたりと黙った。
効果無用か……？
「あっはっは！！ 笑いが止まらないな！！」
「…………は？」
すると、いきなり今までの
「ふふっ、ははは！
今の生身の人間がこんなにも愉快で醜い存在だったとは知らなかったぞ！
実に楽しませてくれるな！」
そして先程の銃弾の傷をもろにくらったはずなのに、ゲラゲラと笑い始めた。
その笑顔に無性に苛つく。
「手前、重力を前にその余裕かよ？」
そう呟き、勢いよく地面を踏みしめた。
重力が唸り轟き、地面を抉った。
「…………ふふっ、未だ笑いが治らんが、どうやら貴君は本気のようだね」
そして、ふと頭上から呟かれる声。
「君の実力も理解している。私も本気で行くとしようか」
到底人間の脳には処理不可能なその速さ。
急いで顔を上げるにはもう遅い。
驪駒の強烈な蹴りが、俺の顎を抉った。
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作者名：颯貴@きっちょー | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/MizuhasiSatuki/
作成日時：2021年7月18日 17時
