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「はははっ、ここは幻想郷ではないからな、くだらない遊戯に縛られることはない!
隙間なき猛攻にひれ伏すがいい!」
「っ……!!!!」
芥川は咄嗟に彼女を追わせていた顎を連れ戻し、己の前へと運んで空間を破壊する。
「空間断裂ッ──」
芥川の外套に生える黒獣は咆哮をあげたかと思うと、彼を狙う鱗弾の先の空間を噛みちぎった。
「ほぅ…そんなこともできるとは、生身の人間も捨てたものではないねぇ」
「ッ…はぁ…はぁ………ごほっ」
咄嗟の攻撃に芥川は咳き込んだ。
「……これだけだと、思うなよッ───」
───異能力【羅生門・早蕨】───
その瞬間、彼女の足下に黒き針山が地を貫く。
「がッ……!?!?」
流石の反応速度で避けたものの、早鬼は向かって右翼にもろに早蕨を食らい、天井もろとも串刺しにされる。
動物霊である彼女の羽は鮮血は舞わず、その光景は異色と言えた。
「迂闊だったな………ちっ」
最速を掲げる彼女は、その実力は本来畜生界のような広大な敷地で真意を発揮するものだ。
ビル内のような狭いところでは思う存分羽を伸ばせず、
「安心しろ小娘。楽に逝かせてくれる」
「っは、皮肉だねェ………」
軽口を叩く早鬼だったが、羽が囚われた以上動くのは不可能だった。
───異能力【羅生門・彼岸桜】───
彼の羅生門が早鬼を包み込み、外から鋭利な牙で刺し抜かれる。
だが、彼岸桜が解かれた先に、彼女はいなかった。
「なっ…」
「…………はははっ、甘くみないことだな」
芥川の頭上から聞こえる声。
バッと振り返ったがもう遅く、彼女の比類なき脚力が彼の鳩尾を抉る。
壁二つ吹っ飛ぶ芥川。
彼女の比類なき脚力前に、芥川は成す術はなかった。
(………この蹴り、もう一度食らったら終わりだな…)
壁二つ先の場所で、瓦礫に埋もれたまま、脳内で冷静にことを整理する。
咄嗟に腕で急所は防いだものの、だらりと垂れた両腕に力はもうない。
(…………不本意ではあるが)
(どうやら、本気を出さねばいかぬようだ)
彼の背後でシュルシュルと巻く羅生門。
芥川はそれを静かに身に纏った。
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作者名:颯貴@きっちょー | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/MizuhasiSatuki/
作成日時:2021年7月18日 17時