蒼い燈 Aoi_Hikari 21 (ページ25)

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さよならと覚悟ページ25

side 藤原丈一郎

1ヶ月間、日々成長できたこの公演で

グループとしても関西Jr全体でも個々でも団体としてもスキルアップし続けていった

失敗も乗り越えて成功に変えていって

毎日が楽しくて成長できた自分な達に限りない可能性も感じれて次のステップへ進むのにワクワクして

でも、季節は春

春松竹は毎年心が痛む

春は別れの季節なんて誰が決めたのかは知らんけど、いつも悲しい気持ちになるこの季節

今年の千秋楽はいつもと違ってた

淳弥「丈」

後ろを振り返れば淳弥の姿

「もう来たん、早いな」

時刻はまだ集合時間の1時間前

淳弥「まあな

これ、返しとこう思って」

そう言って渡してきたのは随分前に貸したTシャツ

替えのTシャツを忘れたとかで確か貸してた

「なんや、捨てたんかと思ってた」

淳弥「正直捨てたろうか思ったけど」

「うわ、最低、俺可哀想」

あえて嫌味ったらしく冗談めかしで言えば、優しく笑いながらこう答えた

淳弥「今やJr内のトップアイドルのなにわ男子メンバーがこんなヨレヨレのだっさいTシャツ着てたらあかんやろ？笑

いい加減ダサいのとヨレヨレの服は卒業しいや？」

淳弥は退所する

今日で最後のコンサート

怒涛の関西Jrのグループ結成祭りの前から退所を決めていた淳弥は俺と大橋がなにわ男子に入ったことを何よりも喜んでくれた

俺の代わりにも絶対デビューしてくれと言ってくれた

俺達にアイドルとしての夢を託してくれた

淳弥「なあ覚えてる？」

「ん？」

淳弥「丈がAのこと好きって気付いて俺が全力で諦めろって言ったこと」

「あったな、そんなこと。笑」

淳弥「あの時は恋愛なんか邪魔でしかないって

丈の気持ちも知らずに適当なこと言ってた」

「そんなこと…、」

淳弥「そしたら見事に特大ブーメラン。笑」

「そんな自虐せんでも。笑」

淳弥「俺は仕事も恋愛も全部中途半端やった

自業自得やったよ…だから、丈は凄いなって」

「え…？」

淳弥「デビューしたいっていう意志もAのことが好きやって想いも全部本気で

俺はそんな丈がずっと羨ましかった」

「淳弥…」

淳弥「頑張ってな…」

かつては共にデビューしようと誓った仲間は次の夢へと走っていこうとしていた

増えていくのは託されたタスキの数だけ

「お前もな…」

涙を堪えながら絞り出た一言を残して部屋を去った