微睡み 2 (ページ31)

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黄 side

次の駅への到着間際のことだった。

「あの……、」

必死になっていたところで、誰かに肩をぽんと叩かれる。

黄「…ほんとすみません、次で降りますから、」

周りの視線に怯えきっていた俺は、目も合わせずに口にした。

「〝しんちゃんのばしょ〟はここですか？」

黄「……へ、？」

目線を上げると、慎太郎のお気に入りの場所に座っていたお兄さんが席を立って問いかけてくれていた。

黄「……あ、はい、…でも」

「遠慮せずに。ね？………こっち座る？」

その男性はしんちゃんを誘導して、さっきまで座っていたであろう場所に連れて行ってくれた。…間違いなくしんちゃんのお気に入りの場所だ。

いつもの特等席に座った慎太郎はあっという間に泣き止んで、体を前後に揺らしていた。

「そっかそっか、ここが良かったんね。しんちゃんは。」

慎太郎の目線になって語りかけてくれるその人の暖かさに涙が溢れてきそうになった。

「俺ねー、じゅりっていいます。はじめまして。」

黄「……しんたろう、」

普段、俺や慣れた先生以外に触れられるとすごく嫌がる慎太郎。

なのに、じゅりさんから差し出された手のひらの人差し指をぎゅっと握ってみせた。

驚きのあまり声を出した俺にじゅりさんは疑問の眼差しを向ける。

青「……？」

黄「普段、嫌がるんですよ。人に触れたり、触れられたりするの。だから、凄くびっくり…して、。自閉症で感覚過敏もあって…」

緑「……じゅ、……りー、」

コミュニケーションを嫌がる慎太郎が不思議なほどに引き寄せられていく姿。

初めてみるもので、俺も動揺を隠せない。

青「………っ、」

けれどそれよりも強く、慎太郎の言葉に反応したのはじゅりさんだった。

青「……そのまんま…っ、そのまんまだ、」

黄「じゅりさん……！？えっと、だ、大丈夫ですか、っ、」

顔を覗き込むと、慎太郎の手を握りながらじゅりさんはぼろぼろと泣いているではないか。

緑「……じゅーり、」

青「……俺にも、自閉症の弟がいたんです。こんな風にたどたどしく、……じゅりって、よんで……っ」

慎太郎が何度も何度も、じゅりと繰り返す片隅で、じゅりさんは崩れ落ちた。

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