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光side
〈あ〜!慧くん、待ってたんだよー!〉
待ち伏せしている職員さんの所に行くと、お菓子はもう最後の一個。ぜーんぶ慧くんの分。
職員さんたちはみんな、慧くんがやる気になるのを信じて待っててくれたみたい。
首に下がったカードを見て、バケツにお菓子を入れてくれる。
〈ハッピーハロウィン!お菓子あげるからイタズラしないでね〜!〉
慧くんも行く先々でたくさんの職員さんに話しかけてもらえてとっても嬉しそう。
いつのまにか、手を引いていた筈の俺は慧くんに手を引かれる側に変わっている。
光「いっぱいだね、慧くん!」
他の人から沢山愛されている慧くん。俺がこのデイに来る前から慧くんはここで関わりを広げてきたんだもんなぁ。
マイペースなところもあるけれど、純粋で、綺麗な心の持ち主だって皆知ってたからこそ最後になってもこうして優しく迎え入れて貰えるんだ。
そんな彼も18歳。高校を出れば、この放デイともお別れになる。
あと数ヶ月もしたらこの手に引かれることも無くなるんだなと、近い未来を思って1人で悲しくなってしまった。
慧「んー、んー」
光「くれるの?」
すると慧くんは急に立ち止まって、バケツの中からチョコレートを取って俺に差し出した。
光「慧くんのなのに、いいの?」
俺が受け取ると、もう彼は気にせずに前に進み始めていた。
気がつくと慧くんも口をもぐもぐしている。
いつの間に食べたんだろう。
俺も真似して、口にチョコレートを放り込む。
口内の温度でじわりと溶けたチョコレートはとっても甘くて、だけどその奥にちょっと苦味もあって。
噛むと中からイチゴの甘酸っぱいソースがとろりと出てきた。
ころころと味が変化していくそのチョコレートは、慧くんに似ていると思った。
「しゅいろ」/ end
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作者名:あむ | 作成日時:2021年10月29日 16時