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あなた side
「でも、やっぱり大我くんの負担が大きくなってたこと早く気がつけなかったから。…浮かれてて。」
『俺さ、あそこの物件にしたの決め手があって。』
「…私の職場から近いから、でしょ？」
『んーまぁそれもある。でももっと重要だったのは、キッチンが広かったから。』
「キッチン？」
予想だにしなかった大我くんの考えに私は思わず素っ頓狂な声を出してしまった。
だって、広いキッチンがいいなんて一言も言ってなかったのに。
『Aが料理してんの見るの好きなんだよね、俺。』
『でも俺車椅子じゃん？カウンターの向こう側から眺める、なんておしゃれなことできないから。…せめて隣で見ていたかったの。』
「なにそれ、聞いてないよ…。」
『うん、言ってない。でも内見行った時にあそこのキッチンに立ってるA見てさ凄くしっくり来たの。だから、俺のわがまま。』
大我くんは大きな瞳を三日月みたいに形を変えて、ふにゃんと笑った。
熱のせいか、少し潤んでいてなんだかとっても、可愛い。
「でも、体は大事にして。」
トイレで倒れてる大我くんを見つけた時、冗談抜きで心臓がとまるかと思ったんだよ。
『そうだね。心配かけてごめん。…でもさ、安心して、Aに苗字あげられるまで死ねないからさ。』
「……っ！な、っ、なにそれ！た、大我くん、熱でおかしくなってる！」
「は、はやく寝て！」
私は大我くんの布団をぎゅっと上まで上げた。
だって、今の私の顔、だらしないって自分でも分かるんだもん。
布団の中でしてやったりな顔してる大我くんが容易に想像ついて、なんかちょっと悔しくなった。
fin
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作者名：ばにら | 作成日時：2021年10月21日 11時
