微睡み (ページ38)

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あなた side

大我くんは、仙骨の辺りにできた褥瘡が炎症を起こしたせいで高熱を出していた。

臍から下の感覚が全くない大我くんは、その傷口に気がつけないままバイ菌が入ってしまったんだって。

40度にも近い高熱を下げるために、今は点滴を打ってもらっている。

でもまだ苦しそうな寝顔を見て、どうして気がついてあげられなかったんだろうと後悔の念が私を襲う。

褥瘡ができてしまった理由も心当たりがあった。

大我くんが最終的に決めてくれた同棲場所のマンションは、私の職場に近い。

多分、私が通勤しやすいようにってことを考えてくれたんだろうけど、その分大我くんの通勤距離は伸びて車椅子での移動が以前一人暮らししていた時よりもうんと長くなった。

その時は最後、2つの物件で迷った時今の所の方がいいなって、提案してくれた大我くんの優しさに気が付けていなかった。

部屋が広々としてるし、良いかななんて心躍らせてた自分が今となっては情けない。

「ごめんね、大我くん。」

車椅子をいっぱい漕ぐ大我くんの手は、皮が分厚い。

握るたびに、大我くんの日々の頑張りを噛み締めることができるその手が私は好き。

頬を撫でられた時、ちょっとざらっとするのもまた好き。大我くんを感じられるから。

そんな手をきゅっと握ると、同じくらいの力で握り返される。

「…大我くんっわかる！？」

『謝らないで、A…。』

「聞いてたの…？」

長いまつ毛の隙間から、綺麗な瞳が覗いて私を捉えて離さない。

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