四頁 ページ16
ひたり。月明かりのもと、二人の男が足音を忍ばせて歩いて行く。
ヨコハマの港に近い倉庫街。
赤錆の浮いた倉庫がいくつも並んでいる。
倉庫のあいだから見えるベイブリッジの光が、あたりを一層暗く感じさせた。
街灯も無く、人気も無い。秘密の会談にふさわしい静まり返った場所に肩を並べて踏み入れるのは、長身に眼鏡の男と華奢で気弱そうな青年。───国木田と谷崎だ
谷崎「……国木田さん、どう思います?」
国木田「何がだ」
谷崎「連続自 殺なんて、本当にあり得るンでしょうか?」
谷崎の目線だけが、ちらりと国木田に向けられる。その顔からは、隠せない不安が漂う。
国木田は表情を変えず、暫し沈黙して、硬い声で答えた。
「何とも云えん」淡泊に告げ、国木田は続ける。
国木田「仮に精神操作の異能を受けたのだとしても、それほど強力な異能力となれば必ず国際捜査機関に情報があるはずだ……」
にもかかわらず、現在のところ、依頼人である特務課からは何の情報もない。現状を正しく把握した谷崎は、ため息をつきたい気持ちでうつむく。
谷崎「これから会う特務課のエージェントから、もう少し詳しい情報を貰えるといいんですが」
言葉を吐き出し、谷崎は国木田とともに足を進める。
あたりは静かで、互いの呼吸が聞こえそうだ。満月なのか、やけに大きな月が頭上を照らしていた。待ち合わせ場所は近い。
やがて、とある場所で二人は足を止める。倉庫と倉庫のあいだにある、路地の手前だ。
国木田が袖をまくり腕時計を確認する。
時刻は午後七時五九分四五秒。合流予定の一五秒前だ。
万全を期して毎日時報に合わせているので間違いない。国木田は満足げに頷く。
周囲に視線をめぐらせていた谷崎が「国木田さん!」と鋭い声を上げた
緊張感を孕んだ様子に、国木田は弾かられたように顔をむける。谷崎が見ているのは路地の向こうだ。
何が、と思う間もなかった。
路地のさきに、倒れる人影が見えたのだ。
清潔そうな背広。少しすり減った靴底。弛緩した四肢。
そして、倒れた体の下に広がる、血。
じわじわと、血は円を描いて広がっていく。
青白い月光が鮮やかな赤い血に反射した。
血を流したまま無言で倒れる男を見て、国木田と谷崎の二人は即座に動いた。
国木田は
同時に、谷崎も後背に隠していた拳銃を取り出し、構えた。
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こーりん★(プロフ) - 真昼ノ夜さん» ありがとうございます(,,・ω・,,)頑張ります! (2018年8月23日 12時) (レス) id: 6b716a5d54 (このIDを非表示/違反報告)
真昼ノ夜 - 続きが気になります!これからも応援します! (2018年8月23日 12時) (レス) id: 15eeb3cf2b (このIDを非表示/違反報告)
彼岸(プロフ) - とわさん» コメントありがとうございます!(*'ω') 文ストの映画とても面白かったですよね(´ω`) 更新がんばります! (2018年4月11日 5時) (レス) id: 6b716a5d54 (このIDを非表示/違反報告)
とわ - 文ストの映画面白かったですよね!楽しみにしてます! (2018年4月10日 22時) (レス) id: c39588bb3c (このIDを非表示/違反報告)
こーりん★(プロフ) - シロさん» コメントありがとうございます。今のところこの作品は、まだ設定だけで投稿はもう少し先になると思います。シロさんの言うとおりもう暫くは控えようと思います (2018年3月10日 7時) (レス) id: 6b716a5d54 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こーりん★ | 作者ホームページ:http://ガリィドール☆のホムペ
作成日時:2018年2月24日 23時