その意味は ページ3
入社して一ヶ月が経つ頃だった。
Aは、本来なら調査員のするような、切った張ったの荒事に巻き込まれた。原因は───芥川関係、とだけ述べておく。
その時、異能力者、つまりは調査員の先輩から拳銃の使い方を教わる羽目になった。
事務職の、ただの一般人だったはずなのに。
Aは所持の仕方について、素朴な疑問を投げかけた。
その先輩社員は、こう答えた。
「隠しておくに越したことはない。無駄な軋轢を避けられる。用心したうえでポケットや懐に入れるか……ちゃんと
その先輩社員は、両利きだった。
流石調査員と云うべきか、拳銃の扱いも上手く、両脇の
だから気づかなかった。
拳銃は、実際持ってみると、思いの外重い。
こんな物を懐なんかに入れて、片側だけに持つのなら、それは相当気を使わなくてはならないんだ。
重心が傾いて、肩が片側だけ下がってしまわないように。
「喫茶店で偶々隣になった人の素性なんて、探るもんじゃない」
その通りだ。
あの人が、もし本当に拳銃を隠し持っていたのなら。
あの人が実は裏社会の人間だったのなら。
そんな人間が、隣に座っていたのなら。
少し間違えれば、店を出てすぐの目立たない裏路地で、撃たれて死んでいたかもしれない。
「左肩が、なんて云うもんじゃないよ。ここではね」
その通りだ。
そんな無遠慮なことをするには、この街はあまりに
危険だった。
ここは魔都・ヨコハマ。一本路地裏に入れば、裏社会が顔を見せる街。
昼下がりの喫茶店だろうと、この街の暗部は影のように、すぐに後ろにいる。
あの人の助言は、正しく、的確だった。
あの時、もう一歩踏み込んで、気付いてしまえば──
あの人は、私を撃ったのだろうか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 55人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
綺月(プロフ) - やっつーさん» ありがとうございます。長い自粛生活もそろそろ終わりが見えてきました。スピードは落ちると思いますが、これからもよろしくお願いします！ (2020年5月20日 16時) (
レス) id: c6edb3b0cf (このIDを非表示/違反報告)
綺月(プロフ) - 桜の下さん» ありがとうございます！作品、拝読させて頂きました。お互い頑張りましょう！ (2020年5月20日 16時) (レス) id: c6edb3b0cf (このIDを非表示/違反報告)
やっつー(プロフ) - 完結おめでとうございます！これからも健康に気をつけて、頑張ってください！ (2020年5月20日 13時) (レス) id: 7ab3b51d33 (このIDを非表示/違反報告)
桜の下(プロフ) - 完結おめでとうございます！とてもいい作品でした！ありがとうございました！ (2020年5月20日 12時) (レス) id: 28ae7de14c (このIDを非表示/違反報告)
綺月(プロフ) - コメント、ありがとうございます。設定や表現は、beast本編を読み込んで、自分らしさと文ストらしさを出そうと作っていった物なので、そう言っていただけて嬉しいです！ (2020年5月20日 10時) (レス) id: 25e76864a2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：綺月 | 作成日時：2020年4月19日 15時
