堕落論 ページ19
「以上が、私、夜月Aと、ポートマフィア首領、太宰治の関係です」
Aは、喫茶店で太宰と出会ってから、三日前太宰が死ぬまでのことを簡潔に話した。
淡々と、あまり感情を介入させずに話したのは、特務課のエージェント相手には必要ないと思ったからだった。
「最後に一つ、私から坂口さんに質問してもいいですか?」
坂口が、録音していたレコーダーを止めた後、Aは笑顔で云った。
坂口は躰を硬くした。
まだAの嫌疑が晴れたわけではない。
彼女は何を訊こうとしている?
それは少々意外なことだった。
「坂口さんは何か異能を持ってるんですか?特務課は、異能力者を異能で狩る、と聞いたことがあるんですけど」
暫く間があって、坂口は答えた。
「……ええ、僕も異能者です。何故それを?」
エージェントである自分の異能を、マフィアとの内通が疑われている人物にそう易々と話してよいものか、という考えが脳裏を横切ったのだった。
だが、坂口は
「態々聴取に来るくらいだから、尋問に向いている異能者なのかと思って。もしそうなら、遠慮なく使っていいんですよ。私は構いませんから」
Aの表情は、相変わらず柔らかかった。が、その目には、長年1つの事件を追う刑事のような強い信念が、宿っていた。
「私は、真実が知りたいだけなので」
強い意思を持って、その言葉は発せられた。
これは、正義の側の目だ。
坂口にそう思わせる程の、強い、光を持った目をAはしていた。
「……僕の異能は、記憶抽出能力です。やろうと思えば、貴女の所持品や、貴女自身から記憶を読み取って、今の証言が真実か知ることもできる」
観念した坂口は、そう告げた。
彼の異能は、普通の人間からすれば気味の悪いものだし、恐ろしいものだ。なんてったって、プライバシーというものが無い。
だが、Aが表情を曇らせることはなかった。
「成程、流石特務課、便利な異能ですね。それでは、その異能を使ってください」
呆れる程簡単に、Aは云った。
「そして証言してくれますか?うちの社長に」
微笑むA。
「織田さんには、無実が証明されるまで拘束していていいと云いましたが、ベッドの上で考え続けるのにも飽きてきたので」
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綺月(プロフ) - やっつーさん» ありがとうございます。長い自粛生活もそろそろ終わりが見えてきました。スピードは落ちると思いますが、これからもよろしくお願いします! (2020年5月20日 16時) (レス) id: c6edb3b0cf (このIDを非表示/違反報告)
綺月(プロフ) - 桜の下さん» ありがとうございます!作品、拝読させて頂きました。お互い頑張りましょう! (2020年5月20日 16時) (レス) id: c6edb3b0cf (このIDを非表示/違反報告)
やっつー(プロフ) - 完結おめでとうございます!これからも健康に気をつけて、頑張ってください! (2020年5月20日 13時) (レス) id: 7ab3b51d33 (このIDを非表示/違反報告)
桜の下(プロフ) - 完結おめでとうございます!とてもいい作品でした!ありがとうございました! (2020年5月20日 12時) (レス) id: 28ae7de14c (このIDを非表示/違反報告)
綺月(プロフ) - コメント、ありがとうございます。設定や表現は、beast本編を読み込んで、自分らしさと文ストらしさを出そうと作っていった物なので、そう言っていただけて嬉しいです! (2020年5月20日 10時) (レス) id: 25e76864a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綺月 | 作成日時:2020年4月19日 15時