変わってしまった人、変われなかった人 ページ39
平井はスマホを取り出して、チラリと見た。
苦々しい顔をすると、舌打ちをして、画面を覗いた。
何度かスワイプして、端末を耳にあてる。
『やあ、平井君。まさか君と電話する日が来るなんてねえ』
「うっせえ」
薄く笑うAに青筋を浮かべて、平井はスピーカーボタンを押す。
『それで、赤井さん、どうだって?』
Aは、真剣な声になって言う。
空気が変わる。
やっぱりコイツは根が真面目だ。
昔っからクソ真面目な優等生。その上自分が正しいと思ったことは変えない。扱いづらい奴でもあるけど、それでも真っ直ぐなうちはよかった。
アイツが曲がったのは、中学になってからだ。
アイツは誰にも、何も言わなくなった。
ただ冷やかに人を見つめ、時々哀しい、諦めた目をする。
言っても無駄だ、とでも言うように。
すれた顔して、いつも本ばっか読んで。
自分から話しに行くのは、彩か、部活の奴らか。
でも、何も思ってないわけじゃない。
変わったアイツが嫌いだった。
でも本当は、変わったのは俺たちの方だったのかもしれない。
アイツの本質は変わらない。
昔から、周りの奴らとはどこか違った。
中学になって知った、アイツの
頭の良い奴は、大体どこか変なところがある。
よく分からない皮肉やユーモアを振りかざしていたと思えば、一瞬で策士の顔に変わっている。
アイツはそんな
平井は苛々と頭を掻いて、呼応するように真剣な顔になる。
「道具さえ揃えば出来るってさ。今、ここにいるよ」
赤井を見て、自分のスマホを指す平井。
赤井は頷いて言った。
「アレは道具というより技術が重要だ。恐らくこちらの世界でも再現できる」
『へえ? じゃあ問題解決だ。』
Aは、ニヤリと言った。
『哀ちゃんに向けた暗号には、ウチの場所が示してある。だから赤井さんを外に出さなきゃ、彼女と会うことはまずない』
確信を持ってAは説明する。
『彼女が来たら、ウチでしばらく足止めする。その間に平井と赤井さんは準備をしなよ』
Aはその作戦に自信を持っているらしく、声色には余裕がにじみ出ている。
『蝶ネクタイ型変声器をちょっと改造して服に隠せるようにしておくよ。それと
平井と赤井は、頷いた。
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桜 - これめっちゃ現実性あるねぇ (2020年8月30日 20時) (レス) id: 44f3b52daa (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - コナン側、主人公側、互いの立場から来る優位性のようなものがなく、また主人公の心情や周りとの関係性の変化などとても読み応えのあるものでした。読後感はどこか物悲しく、しかし確実に続編への布石を……!このあと続編の方を拝読します!ありがとうございました! (2020年8月18日 0時) (レス) id: ad5934c8e1 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - サブタイトルでちょっと笑って読み始めたのですが、読み進めるうちにどんどん引き込まれて行きました。何より他の二次創作との差を感じたのが、主人公たちのいる世界が「コナン」側の世界とまるで対等であるように描かれていると感じた所です。 (2020年8月18日 0時) (レス) id: ad5934c8e1 (このIDを非表示/違反報告)
綺月(プロフ) - ナミさん» 最後まで読んでいただきありがとうございます。続きは……もう少しお待ちください! 作者としても、チーム『マクスウェルの悪魔』には、残された沢山の謎を解決してもらいたいですからね笑 いつも、感想と励ましの言葉をいただけて、とても嬉しかったです。 (2020年6月30日 22時) (レス) id: a7057fda4f (このIDを非表示/違反報告)
ナミ - 最終回とっても面白かったです。組織の研究所みたいなことを言っていたので今度はトリップかなと続きが楽しみです。続きがどうなるのか?それとも無しなのか?出来れば続いて欲しいです。最後にお疲れ様でした。 (2020年6月29日 4時) (レス) id: 134760d3d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綺月 | 作成日時:2020年5月9日 0時