某死神少年との遭遇 〜外出は自粛してもらおうか〜【名探偵コナン】

雨の日は読書に限る ページ30

翌日は、雨だった。

「春の雨だねぇ」

　窓の外を眺めると、しとしとと優しい雨が降っていた。

「激しくはないから、あのメモは大丈夫そうだな……」

　コナン君は呟く。やっぱ君の心配事はそこだよね。
　帰る準備を進めたいところだったけど、雨じゃしょうがない。

　休憩する日にしよう。

「今日は読書でもしない？何か読みたい本、ある？」

　少し考えて、彼は答えた。

「そうだな……推理小説は、ある？」

「ああ、勿論！」


　それから、私は乱歩の短編集、コナン君は私が貸した推理小説を読んだ。



　暫く読んでいると、コナン君が私の方をじっと見ていることに気づいた。

「Aさんって、最初会ったときも江戸川乱歩読んでたよね」

「うん。確か、君に少年探偵団を進めたっけ」

　たった数日前のことだ。
　でも、その間にはコナン君が来たり、赤井さんが来たり、彩や平井と再会したりした。

　ここ数日濃すぎたせいで、随分と昔のような気がする。

「本当のところ、どの作品が好きなの？」
　純粋に、同じ推理小説オタクに興味があるらしく、目を輝かせて聞いてきた。
　だが、彼は後でちょっぴり後悔することになる。

　オタクの魂に、火をつけてしまったことに。


「二銭銅貨は偶に読みたくなるなぁ、あの点字の暗号が好きでね。明智さんの話も好きだよ？そういや毛利のおっちゃんも小五郎さんやったね。でもやっぱ人間椅子とか屋根裏の散歩者とか、現実に出てきそうなんがいいなぁ。芋虫みたいな過激なやつも、嫌いじゃないよ？戦時中は墨ばっか入れられてたけど、それだけ戦争の惨さわかる作品だしね。まあ、違う意味でも子ども向けとは言えないけど、中学の図書室にあったしアリでしょ」

「全部じゃねえかよ」
　半目でツッこむ。
　これがジト目というやつか。

　そのくらいじゃあ、オタクの猛攻は止まらない。

「あ、子供向けの少年探偵団シリーズとかも良いよねぇ、読みやすいし夢があって。小林少年が『〜かしら』って言ってるのがクセになって、しばらく独り言の疑問形がそうなってたよ。もしかしたら彩は覚えてるかもねぇ」

「本格的に全部じゃねぇかよ」
　思いっきりツッこんで、コナン君は笑った。

　ああ、久しぶりにツッコミがいる……
　妹も母さんも、どこかボケ属性だからなぁ。

　ツッコミがある喜びを噛みしめて、私も一緒になって笑った。


　この楽しい時間が、永遠に続けばいいのに。

　まあ、帰ってくれないのも困るけどね。

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