阿笠邸にて ページ28
その日、灰原は一人で映画を観にいっていた。
映画の内容にはそれなりに満足し、阿笠博士の待つ阿笠邸に帰ってきたところ。
「大変じゃ哀君!新一君がいなくなってしまった!!」
博士がひどく慌てて家から飛び出してきたのだ。
「どうしたの博士!何があったの?」
「それが……」
家に入り、事情を聞く。
「ええ!?発明品の試運転をしていたら、工藤君がいきなり姿を消した!!?」
「そうなんじゃ、哀君。どうすれば良いかのう」
灰原は頭を抱えた。
「そんなの決まってるじゃない!まずは原因を調べて、別の場所にいるのか、それとも存在自体消えてしまったのかだけでも突き止めましょう」
博士は試運転をしていたメカを灰原に見せる。
「博士も爆発に遭って無事なんだから、これが原因じゃないのかもね……他に、近くにあった発明品は?」
「あとはコレくらいかのう」
そう言って引っ張ってきたのは、膝くらいまでの高さの、正六面体の箱だった。
「これは?」
「次元を歪めると言われておる物質で作った実験装置じゃ」
「どう考えてもそれが原因ね……」
灰原は呆れたように言った。
どうしてそんなものを博士は作ったのか……。
実験装置は鈍く光る金属のようなもので出来ている。
表面に入った幾何学模様に、灰原は、なにか得体の知れない不気味さを感じた。
「別次元で生きている……という可能性は?」
灰原は冷静に尋ねる。
「研究途中の物じゃから、ワシもよく分からんよ……でも、きっと」
博士は祈るように、手を合わせた。
「可能性は、ありそうね。なら博士はその装置を完成させて。工藤君の飛ばされた場所まで特定するのよ」
「ええ、哀君、これは世界でもまだ研究が進んでいない分野なんじゃぞ」
博士は困り顔だが、灰原は気にもとめず奥の部屋に行く。
「任せたわよ。場所がわかったら、私が救出に行くから。その準備も、やっといてね」
「ええ!?それは危険じゃ、哀君」
灰原を止める博士。
でも、灰原はもう決めているようだった。
「危険だからこそ、私しかできないでしょう?」
133人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桜 - これめっちゃ現実性あるねぇ (2020年8月30日 20時) (レス) id: 44f3b52daa (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - コナン側、主人公側、互いの立場から来る優位性のようなものがなく、また主人公の心情や周りとの関係性の変化などとても読み応えのあるものでした。読後感はどこか物悲しく、しかし確実に続編への布石を……!このあと続編の方を拝読します!ありがとうございました! (2020年8月18日 0時) (レス) id: ad5934c8e1 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - サブタイトルでちょっと笑って読み始めたのですが、読み進めるうちにどんどん引き込まれて行きました。何より他の二次創作との差を感じたのが、主人公たちのいる世界が「コナン」側の世界とまるで対等であるように描かれていると感じた所です。 (2020年8月18日 0時) (レス) id: ad5934c8e1 (このIDを非表示/違反報告)
綺月(プロフ) - ナミさん» 最後まで読んでいただきありがとうございます。続きは……もう少しお待ちください! 作者としても、チーム『マクスウェルの悪魔』には、残された沢山の謎を解決してもらいたいですからね笑 いつも、感想と励ましの言葉をいただけて、とても嬉しかったです。 (2020年6月30日 22時) (レス) id: a7057fda4f (このIDを非表示/違反報告)
ナミ - 最終回とっても面白かったです。組織の研究所みたいなことを言っていたので今度はトリップかなと続きが楽しみです。続きがどうなるのか?それとも無しなのか?出来れば続いて欲しいです。最後にお疲れ様でした。 (2020年6月29日 4時) (レス) id: 134760d3d6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:綺月 | 作成日時:2020年5月9日 0時