某死神少年との遭遇 〜外出は自粛してもらおうか〜【名探偵コナン】

絶対音感所持者の悲しみ ページ18

「うげ、めっちゃ頭使う……」


「右手と左手バラバラだしねぇ。その賢い頭をフルで使いな、名探偵」

　夕食後、私はコナン君にピアノを仕込んでいた。



「ピアノ男子って、流行ってるんだよ」

　蘭ちゃんにも、モテるんじゃない？なんていったら食いついてきた。チョロい。

　確か蘭ちゃん、ピアノ弾けたよな……習ってた、ってわけじゃないのかもだけど。



「そういやコナン君ってさ」

　ん？と振り向くコナン君。


「音痴なんだって？」

　うげ、って顔だな。知ってたのかよ……って感じか。


「こっちじゃ有名な話だよ。まあ、私も歌は得意じゃないんだけど」

「得意じゃない？なんか意外だね」

　それがねぇ、好きではあるんだけども。

　まず歌う機会がないっていうか……

「ほら、合唱とか大体、伴奏だし。学校の生徒数が少ないと、特にさ」

　卒業式なんか、国歌しか歌ってないよ？


　ピアノを長くやってる分、人より早く弾けるようになる。

　それに、意識しなくても音名が聞こえるお陰か、楽譜を読むのも覚えるのも、結構早い。

　まあ、ソナタだろうとハノン(練習曲)だろうとドレミで歌えるんだから当たり前かもしれない。

　すると、任せられる曲数が増える。

　ウチの学年はピアノ人口が異様に少なかったから、それもあるけどね。

　私が弾かなかったら先生が弾くことになるんだもの。

　で、それに伴い歌う曲がなくなるってわけ。


「音程は取れるから、音痴じゃないけどね〜」

　からかうように言うと、ぶすーっとむくれるコナン君。

　その顔が面白くて、私はしばらく笑った。



「そういえば、夏来さんはどうなの？」

「絶対音感か、ってこと？うーん、難しい質問だなあ」

「難しい質問？」

「私の真似をしてるのか、彼奴も結構色んな曲をドレミで歌うんだけどね。大体合ってるのに、時々、普通の人にも指摘されるような、ありえない音の飛び方するんだよ……」

「絶対音感って言うに精度が悪すぎるんだけど、一個の音を鳴らしたらちゃんと当てたりするし……まあ、よくわかんないや！」

　音感にも二種類あって、単独で音を当てられるのが絶対音感。そしてもう一つ、音同士の高さの差を当てられるのが相対音感。
　前者は持っている人が少ないようだけど、後者は誰でも持ってる。

　相対音感は誰でも持っているから、絶対音感じゃなくても耳コピできるらしい。

　妹の場合は……なんというか、相対音感が馬鹿になってる気がする。

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