END : 今は笑顔でさよならを ページ50
同日、夕刻。
あの日、コナン君と遭遇した公園に、私たちは来ていた。
哀ちゃん、コナン君、沖矢──赤井さん、彩、平井に夏来、それから私。
公園の周囲には誰もいない。それはみんなで確認済みだ。
太陽が、山と山の間に沈もうとしていた。
哀ちゃんが、隠していた移動装置を引っ張ってくる。
灰色がかった薄紅の花弁が、静かに舞っていた。
「工藤くん達が迷惑かけたわね」
少し申し訳なさそうな哀ちゃんに、「そんなの気にしてない」と笑いかける。
「私たちは楽しませてもらったから、全然大丈夫だよ」
三人が、転移装置に乗る。
最後にコナン君は尋ねた。
「そういえば、何で俺たちを助けてくれたんだ?」
私は彩と顔を見合わせて、それから彩が平井に向かって頷いて、三人、揃って言った。
『人が人を助けるのに、理由なんているか?』
あの、名ゼリフを。
「私たちは、君たちの世界を応援してる」
笑顔でエールを送ろう。
別れは少し、寂しいけれど。
今は、笑顔でさよならを言おう。
風が強く吹き、橙色に輝いた花びらが渦を巻く。
「お世話になりました」という三人の声が聞こえた気がした。
「行っちゃったね」
薄暗くなった公園で、しんみりと呟く。
「今日が終われば、また私たちの腐れ縁も切れる、かな」
彩は、寂しそうに
「A、こっちではもう遊ばないの?」
「結構忙しくてね……多分、この騒動が終わったらまた毎日学校だし」
私は少し考えて、続けた。
「まあ、まだ終わりそうにないけどね」
平井が何か言おうとして、やめた。
夕日が沈む。もうすぐ今日という日が去り、この怒涛の一週間も終わってしまう。
いつか、この日を忘れてしまうだろうか。
いや、きっと ──
元の世界に無事帰ったコナンと赤井は、それぞれの居候先に帰る。
工藤家の前でコナンはようやく口を開いた。
「そういえば赤井さん、結局どこで
「お察しの通り、任務中── 組織との関係を疑って忍び込んだ、ある研究所の中だ。何かが落ちていて、拾おうとしたら── 。……恐らくそれがあの『物質』だったんだろう」
赤井の答えに、コナンの顔つきは険しくなる。
「研究所、か……」
『騒動』は、まだ続くのかもしれない。
END : 『今は』笑顔でさよならを
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桜 - これめっちゃ現実性あるねぇ (2020年8月30日 20時) (レス) id: 44f3b52daa (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - コナン側、主人公側、互いの立場から来る優位性のようなものがなく、また主人公の心情や周りとの関係性の変化などとても読み応えのあるものでした。読後感はどこか物悲しく、しかし確実に続編への布石を……!このあと続編の方を拝読します!ありがとうございました! (2020年8月18日 0時) (レス) id: ad5934c8e1 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - サブタイトルでちょっと笑って読み始めたのですが、読み進めるうちにどんどん引き込まれて行きました。何より他の二次創作との差を感じたのが、主人公たちのいる世界が「コナン」側の世界とまるで対等であるように描かれていると感じた所です。 (2020年8月18日 0時) (レス) id: ad5934c8e1 (このIDを非表示/違反報告)
綺月(プロフ) - ナミさん» 最後まで読んでいただきありがとうございます。続きは……もう少しお待ちください! 作者としても、チーム『マクスウェルの悪魔』には、残された沢山の謎を解決してもらいたいですからね笑 いつも、感想と励ましの言葉をいただけて、とても嬉しかったです。 (2020年6月30日 22時) (レス) id: a7057fda4f (このIDを非表示/違反報告)
ナミ - 最終回とっても面白かったです。組織の研究所みたいなことを言っていたので今度はトリップかなと続きが楽しみです。続きがどうなるのか?それとも無しなのか?出来れば続いて欲しいです。最後にお疲れ様でした。 (2020年6月29日 4時) (レス) id: 134760d3d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綺月 | 作成日時:2020年5月9日 0時