彼らにとっての異世界 ページ16
「どうして？」
私は分からなかった。
どこからその自信が出てくるのだろう。
コナン君は、説明した。
「俺を助けるのには、それなりのリスクがあるからだよ。もし救助に来たまま帰れなくなったら？」
その一言だけで理解した。
確かに私は、その可能性を考えていなかった。
彼らにとって、ここは異世界。
コナン君は、奇跡的に辿り着いたに過ぎない。
天才の博士が時空の隔たりを解決したとして、本当に2度目の転移が成功するとは限らない。
転移の途中で、死んでしまうかもしれない。
どこともしれぬ空間に飛ばされるかもしれない。
上手く転移できても、会えないままこちらの人間に捕まってしまうかもしれない。
戻れないかもしれない。遺体も見つからず、永遠に行方不明のまま……
背筋に冷たいものが走った。
だから、灰原哀なのか。
「そうか、『私が行くのが一番いいわ』って言いそうだね、彼女なら」
少年探偵団がこっちに来て、帰ってこないとなれば大ごとだ。彼らは元々、普通の小学生。未来もあれば、待っている親もいる。
安室さんも、トリプルフェイスの重役にいる以上、無駄なリスクは犯せないはず。
それに対し灰原哀という人間は、実際にはいない存在だ。
彼女はそれを理由に、自分が犠牲になるということを許してしまう。
『天国へのカウントダウン』でも、そうだったように。
最後まで爆弾のタイマーの横でカウントダウンし、少年探偵団の子供たちを救おうとしたように。
「だから俺は、灰原が無事に来る可能性に賭ける。アイツがここで俺の居場所を考えるとすれば、一度落ち着いてベンチに座ると思うんだ」
「ああ、ベンチに座って、足をぶらぶらさせてそう……ベンチの縁を掴んで。だから、そこに貼ったのか」
「この公園にベンチはこの一つだけ。灰原なら見つけるだろうぜ、この暗号付きのメモをな」
コナン君は、得意気に話す。
ああ、こう見ると漫画やアニメで推理するときの顔、そのままだ。
見た目が小学一年生とは思えないほど、頼り甲斐がある。
彼がいるなら、灰原哀も大丈夫だろう。
「ベンチの縁を掴むのなんて、身長が足りなくて足がつかないほど小さな子どもくらいだろうね。凄いな、そこまで考えてたなんて」
感心したように、笑ってみせる。
やっぱり彼は、名探偵だ。
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桜 - これめっちゃ現実性あるねぇ (2020年8月30日 20時) (
レス) id: 44f3b52daa (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - コナン側、主人公側、互いの立場から来る優位性のようなものがなく、また主人公の心情や周りとの関係性の変化などとても読み応えのあるものでした。読後感はどこか物悲しく、しかし確実に続編への布石を……！このあと続編の方を拝読します！ありがとうございました！ (2020年8月18日 0時) (レス) id: ad5934c8e1 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - サブタイトルでちょっと笑って読み始めたのですが、読み進めるうちにどんどん引き込まれて行きました。何より他の二次創作との差を感じたのが、主人公たちのいる世界が「コナン」側の世界とまるで対等であるように描かれていると感じた所です。 (2020年8月18日 0時) (レス) id: ad5934c8e1 (このIDを非表示/違反報告)
綺月(プロフ) - ナミさん» 最後まで読んでいただきありがとうございます。続きは……もう少しお待ちください！ 作者としても、チーム『マクスウェルの悪魔』には、残された沢山の謎を解決してもらいたいですからね笑 いつも、感想と励ましの言葉をいただけて、とても嬉しかったです。 (2020年6月30日 22時) (レス) id: a7057fda4f (このIDを非表示/違反報告)
ナミ - 最終回とっても面白かったです。組織の研究所みたいなことを言っていたので今度はトリップかなと続きが楽しみです。続きがどうなるのか？それとも無しなのか？出来れば続いて欲しいです。最後にお疲れ様でした。 (2020年6月29日 4時) (レス) id: 134760d3d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：綺月 | 作成日時：2020年5月9日 0時
