検索窓
今日:12 hit、昨日:0 hit、合計:1,262 hit

「女生徒」 1 ページ2

放課後の図書室。

昼休みはそこそこ人が来るけれど、放課後の今は、図書委員であり、部活中の私しかいない。

静かな図書室には、私が本をめくる音しか聞こえない。

静かな部屋で、たくさんの本に囲まれて、思う存分本が読めるこの時間が、一番幸せ。


「すみません、遅れました」


眼鏡はおばけ。そんなに嫌?

見えないおしゃれに気を使って、自分だけにしかわからないから、自己満足。

可愛いジャピイは可愛がるけれど、汚いカアには意地悪する。

ロココ料理って、一つの大皿にたくさんの種類の料理を盛ることだったんだ。お客さんの前では、お母さんはお母さんじゃない、ただの弱い女。

おやすみなさい。私は、王子さまのいない、シンデレラ姫。あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか? もうふたたび、お目にかかれません。

ーーー『女生徒』


パタン、とゆっくり本を閉じた。目をつむって息を吐き出す。

今日も、面白かったなあ。


「読み終わりましたか?」


急に目の前から声をかけられてびっくりした。

入ってくる音、したっけ? いつ? また目の前にいたのに気がつかなかった。

「……いつからいました?」

「一時間は前ですかね」

一時間以上。ということは、今日もずっと見られてた?

「……見てました?」

「面白かったんですね、その本。表情がくるくる変わってましたよ」

や、やっぱり見られてた。

「声、かけて下さったらよかったのに。何でずっと見てるんですか。

…………一時間も」

「せっかく楽しんでるのに、中断させたくなかったんです。

それに、飽きませんから。見ている僕も楽しいです」

にこにこ笑ってるけど、私はちっとも面白くない。

でも、中断させられるのは好きじゃないし、今読んでいたのは短編小説だから、一気に読みたかった。

先生は観察力が鋭いから、それも見抜いてるんだろうな。

それか、先生も私と同じ考えなのかも。

だから、言い返そうとも思わないけど、やっぱり見られるのは恥ずかしい。

「毎回の事なんだから、そう怒らないで下さい」

「毎回って、そんなに見てるんですか?」

「笹草さん、いつも本に夢中ですから。いくら声を掛けても気づかないでしょう?」

「先生の影が薄いからではないんですか?」

「貴女の場合は違うと思いますよ」

私が先生のことを無視したようにも取れたのに、先生は気にした様子も無くて、面白そうに笑ってる。

「……部活、始めますか」

「そうですね。始めましょうか」

「女生徒」 2→←序章



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (1 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:みい x他1人 | 作成日時:2017年5月25日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。