検索窓
今日:15 hit、昨日:24 hit、合計:14,249 hit

42 ページ42

【Noside】

少し薄暗い部屋から無機質なゲーム音とタップ音が聞こえる。

「……」

真っ黒なゲーミングチェアに体を乗せて明るい画面を見つめる青年ーー、氷織羊がいた。

表情はあまり変わらないが、彼の脳内はある少女のことで一杯になっていた。

脳裏に優しげな笑みを湛えた少女が過ぎる。

と、そのとき。

そばに置いていたスマホが軽快な音を立てた。

チラリと横目で確認すれば、今まで動いていた指が止まった。

パソコンに“GAME OVER”の文字が表示されるも、今の彼にとってはどうでもよくなっている。

メールの相手は潔だ。

内容はーー。“悪い、俺も千切もマネージャーに話を聞いてみたんだけど、駄目だった……。重荷になるかもしれないけど、後は氷織だけだ。頼んだ”

全てを読み、氷織は小さく息を吐いた。

「駄目、やったんか……」どこか落ち込んだ声を漏らす。

同時に思った。

(後は僕だけ。……なら少し強引に聞き出さんとあかんかも)

その透き通った水色の瞳に、微かに影が落ちる。

氷織は静かにスマホを触り。

プルルル Aに電話を掛けた。

暫くして。『ーーはい』

聞き覚えのある落ち着いた声が届いた。

「あ、Aちゃん。こんな夜遅くに堪忍な。寝とった?」

氷織はどこか可愛らしい声で尋ねる。

『うんん、大丈夫。それで……、どうしたの?』

「えっと、な。急で悪いんやけど、近い内に一緒に出かけへん?」

『一緒に?』

スマホ越しから反芻する声が聞こえる。

『う、ん。別にいい、けど……、何だか珍しいね。何かあった?』

「や、そういう訳やあらへんよ。Aちゃんとは色々話したいこともあるし」

そう言いながら氷織は俯いて髪を揺らす。

その表情は笑っているようでどこか虚ろげだ。

Aと少し話し、電話を切る。

「……堪忍な、Aちゃん」

その言葉は誰に届くこともなく、空気と飽和した。

43→←41



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (34 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
105人がお気に入り
設定タグ:ブルーロック
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:メビウス | 作成日時:2023年9月29日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。