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俺は彼女の頬に手を添えて、彼女の瞳を見つめた。

「縋るものが欲しいのなら、俺に寄りかかれば良い。泣きたいのなら、いつでも胸を貸す。忘れたいのなら、俺が忘れさせてやる。だから俺を選んで、エラ。今は辛くてもいつかは平気になる。俺がそうさせる。」

『シリウス…』
彼女のサファイアの瞳が涙を帯びて輝いて見えた。

「エラ、君が好きだ。ずっと一緒にいてほしい。君を幸せにするのは俺がいい。」

『シリウス…それってなんだかプロポーズみたいだよ…』

そう言った彼女の顔は真っ赤だった。
きっと俺の顔も。

「そうと言っても、間違いでは無いかもな…俺にはエラだけだから。これからも、ずっと」

彼女の目から止まっていた涙が再び溢れた。
泣きすぎた彼女の目元は真っ赤で今にも溶けてしまいそうだった。

「今日のエラは泣き虫だな」
『だって…シリウスがそんなこと言うからっ…!』

彼女は俺をきっと睨みつけたけれど、全然怖くなんてなくて、ただただ可愛いだけだった。
俺の頭の中は彼女も俺を好きなんだという確信に、幸福感で満たされていた。
彼女の額に自分の額を寄せて、彼女の瞳を覗きこんで見つめた。

「これは、嬉し涙?」
『うんっ…そうだよ』
「エラは、俺が好き…?」
『…うん、大好き』

俺たちはしばらく無言で見つめ合った。

そして、どちらともなく唇を寄せ合った。
彼女との初めてのキスは涙の味がした。

『ふふっ』
「なんで笑うんだ?」
『だって、シリウスったら耳まで真っ赤なんだもの』
「エラだって!」

俺たちは笑い合った。
何がそんなにおかしいのか分からなかったけれど、ただただ幸せでいつまでもこうしていたいと思った。

そして、気がついた時にはすっかり日が暮れてしまっていた。
夕食を食べ損ねた俺たちは、厨房に忍び込んで夕食の残りを分けてもらった。

最後に彼女の腫れた目を魔法で治してやって、寮の階段で別れた。

別れ際に彼女が笑って言った。
『ねぇ、シリウス。これからはエリーって呼んで。小さい頃、お母さんがそう呼んでくれてたの。これからはシリウスにそう呼んでほしい。』
その笑顔はまるで憑き物が取れたような、晴れ晴れとしたものだった。

それから部屋に戻った俺を待っていたのは、こんな時間まで何をしていたのかというジェームズたちの追求だった。
結局洗いざらい吐かされるはめになった俺は、それから数日、ジェームズたちの生暖かい目線に耐えなければならないのだった。

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作者名:Miharu | 作成日時:2024年3月9日 20時

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