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『じゃあ私、今日は非番だからもう帰るね。』


そう国木田くんに一言告げて探偵社の階段を下る。

国木田くんも「態々すまなかったな」と言ってくれた。私を呼び付けた太宰さんは何処へ行ったのやら……。



空を見上げるともうすっかり暗くなっていた。
少し欠けた月がぼんやりとした光を放つ、
幻想的な夜だった。



早く帰って寝たいな、と思い乍ら社員寮へ足を進めていると、突然誰かに腕を思い切り引っ張られた。


『_____!、』


あまりの力強さに体のバランスを崩した私は引っ張った張本人であろう人物に支えられる形になってしまう。



「よォ、A♡」



私を抱きとめたのは男だった。
この筋肉質な腕を見る限りそれは間違いない。
じゃあ誰だ、と思い上を向くと、長めの桃色の髪の毛が見えた。



『あ、千夜ちゃん。』



前回私の家で即爆睡を決め込んだ挙句、キスをしていった三途春千夜であった。



『……今日は如何したんですか、こんなせくはら紛いのような事迄して。』


私がそう尋ねると、彼は


「お前、武装探偵社だったんだな」

『え……何処でそれを?』


知られて困るものでもないし、知られていること自体は別に善い。何なら新聞紙に載った事もあるので今更だ。


只彼は以前会った時それを知らなかった筈である。
だから純粋に気になった。



「調べた。」



いや、其の方法が知りたいんですよ此方は……



『あ、でも其れなら私も調べましたよ。』


「あん?何をだよ」


『……三途春千夜さん。梵天のなんばーつー、なんですね?』



私がニヤ、と笑ってそう告げると千代ちゃんは私のことを近くの壁に押し付けてきた。

所謂、壁ドンと云うやつであろうか。

然し此の場にそんな甘い空気は流れていない。
殺伐としている。



「……テメェ、何処でそれを知りやがった?なァ、言えや!おい"!!」



先程迄とは人が変わったようになる千夜ちゃん。
押し付けられた背中はかなり痛い。



『先日お預かりさせていただいた拳銃の入手ルートを辿りました。

何故警察が梵天(あなたたち)を追えていないのか分からないほどには簡単でしたよ?

今後はもっと複雑化した方がいいかも…しれませんね』



其れを聞いた千夜ちゃんはチ、と舌打ちすると


「で?テメェはどうするよ!!

武装探偵社様なんだろ?俺を捕まえるか?殺すかぁ?あ"ん???」


思っていたより怒鳴られて少しムカついたので反抗してやろうと

ぺち、

と彼の頬を弱めに叩いた。

〇→←〇


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作者名:ももも | 作成日時:2021年8月23日 5時

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