02 :はたらかない好中球とはたらく赤血球 ページ3
.
ここは腎臓。今日も今日とて平和な日になりそうだ。
この爽やかな空気、体は絶好調なようだ。
「ピンポーンッ♪ピンポーンッ♪」
細菌の侵入を知らせるレセプターも元気に鳴っている。俺はそっと音量を切って帽子を遠くへ投げ捨てた。
ふぅ。これで暫くはゆっくり出来るだろう。
大丈夫、なんたって白血球は僕以外にも腐る程にうじゃうじゃと居るんだから...。
重くなっていく瞼に抗う事はせず、安らかに睡眠を始めて体感5分。
僕は突然、腰に何かがぶつかったような大きな衝撃に襲われた。
「がふっ！！」
「あっ、あああ！ごめんなさいごめんなさい！大丈夫ですか！？」
痛みと驚きに目を見開いて体を起こすと、土下座でもする勢いで謝る赤血球の姿を視界に捉えた。
「...ちゃんと周り見て、気を付けて」
...というか、酸素を持った赤血球がどうしてこんな所に？
ふと目線を動かすと未だにペコペコと謝る彼女の手には地図が握られている。
成程、絶賛迷子ってところかな。
地図をちらりと盗み見ると目的地らしき場所が記されたメモが地図に貼り付けられていた。
その場所は構造的には恐らく右手の...ん？ここ腎臓だよな？
方向音痴と呼ぶにはちょっと異次元すぎないか、この赤血球。
頭の中がハテナに満たされつつどうするかと考えていると、先程まで延々と謝っていた赤血球がじっとこちらを見ていることに気が付いた。
「...何？」
「あっ、す、すみません！白血球の方...ですよね？」
「...そうだけど」
「その、珍しい姿をされているなあ...と」
ちらちらと目線を右往左往に泳がせながらしどろもどろ話す赤血球。
珍しい姿。そりゃあ、他の真っ白な白血球を知っているならそう思うだろう。
何せ僕は、他の白血球とは違って髪の毛が真っ黒に染まっているからだ。
「余り一緒に居ると変な菌に感染するかもよ」
ちょっとした冗談だったのだが、彼女は素直な性格をしているのだろう。間に受けた赤血球は顔を青くさせ、ビクッと大袈裟に体が震えた。
「え"っ！？」
「冗談。何本気にしてんの？」
赤血球の帽子に付いたバッジを見るとAE3803と書いてある。
これが彼女の識別番号なのだろう。
「右手の神経に酸素(それ)届けに行くんでしょ？仕方ないから案内してあげる。...ついて来なよ、3803番さん？」
踵を返して右手に向かう血管を歩き出すと、彼女は「はい！ありがとうございます！！」という元気な声が響かせ、酸素を乗せた台車を引き始めたのだった。
03 :細菌の襲撃と汚れずの好中球→←01 :怠惰な汚れずの好中球
ラッキーカラー
あずきいろ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 289人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
海藍 - 凄い、、、 (5月21日 23時) (
レス) id: 34bd24184d (このIDを非表示/違反報告)
仁兎 - 鶴丸国永が出てニヤニヤしてしまった…えへへ (2020年7月12日 10時) (レス) id: 01ef15654f (このIDを非表示/違反報告)
まじかるれいん☆ - あああもう展開分かっちゃったふふふふ← (2018年12月30日 21時) (レス) id: 9a258b9a35 (このIDを非表示/違反報告)
蒼空みや(プロフ) - ぷらんくとん。さん» コメントありがとうございます！楽しみにしていただきありがとうございます♪このあとの話もお楽しみに！ (2018年9月17日 22時) (レス) id: 7eb3a685bd (このIDを非表示/違反報告)
ぷらんくとん。 - 更新楽しみにしてます！ (2018年9月17日 11時) (レス) id: 4eb7efbf3a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蒼空みや | 作成日時：2018年8月21日 3時
