第壱章 君は愛しいモノノ怪-09- ページ10
『キヨさんすみません、ご迷惑おかけして』
「全くな」
最初出会った時よりもつっけんどんなキヨさんの物言いに萎縮する。
学生寮までの道のりは、車で向かっているとはいえ何十分にも何時間にも感じられる。
冷たい雰囲気の車内が気まずくて、何か話題を、と頭を巡らせた。
『…あの、モノノ怪って生まれつきなんですよね?』
「ああ」
『ということは、モノノ怪は遺伝するってことなんですか?』
「別に毎回遺伝するわけじゃない。ただモノノ怪に罹った人間が死ねば、その血族から次のモノノ怪が生まれるってだけだ。生涯モノノ怪と気づかないやつもいるけどな」
『気づかないことなんかあるんです?』
私はこんなに悩まされたのに。信じられなくて眉を顰めた。
「たとえば狐だったら、自分でモノノ怪をうまく操れればただモテるやつってだけだしな」
『そっか…』
キヨさんの言葉に納得していると車がゆっくりと止まる。
「ほら、ついたぞ」
『すみません、じゃあここで』
ぺこりと頭を下げると、キヨさんは不機嫌そうに顔をしかめた。
「部屋までいかせろよ、ちゃんと見届けねえと俺が責められるんだから」
不本意だけどな。キヨさんはそう言って車から降りる。
全く、優しいんだか意地悪なんだかわからない人だ。
*
『お茶でも飲んでいきますか?』
「コーラなら飲む」
『コーラ…はないんですけど』
自分の部屋に向かいながらキヨさんと他愛ない会話を繰り広げる。学生寮の最上階、角部屋という好立地な私の部屋は、エレベーターから降りて少し歩くとすぐに見えてきた。
『とにかく、せっかく来ていただいたのにすぐに帰すのは申し訳ないので上がっていってください』
そう言いながら私の部屋の扉に鍵をさすが、思った方向にうまくひねることができない。
『あれ…、鍵あいてた』
「はあ? なんだよ、不用心だな」
『す、すみません』
キヨさんに謝りながらドアノブを掴むと、ぬめりとした感触が私を襲った。
『…? なに、これ』
手のひらを見ると、白く濁った液が私の手のひらについている。
「……お前それ、」
何かを悟ったような顔でキヨさんが息をのんだ。
「手、貸せ」
呆然としている私の手を取って、キヨさんは自分の服の袖でその液を拭う。
『キヨさん、これ、私、』
「お前はここにいろ、いいな」
キヨさんは切羽詰まったような表情で私の部屋の扉を開けた。
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赤の黒犬 - 昔の実況を見ていたら、キヨさんが夢を中々見ないと仰っていて、そこから来たのかなーとか考えられて凄く面白かったです。 (2021年7月1日 0時) (
レス) id: ba80b57016 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - 平和組の皆さんが可愛すぎて泣ける!!この物語を見ていると引き込まれていくので時間が短く感じます！頑張ってください！！ (2015年11月2日 0時) (レス) id: 4732783237 (このIDを非表示/違反報告)
咲嶋.ぼ(プロフ) - お話の構成がとてもしっかりしており、凄く引き込まれる作品で 大好きです。更新待っております。 (2015年9月9日 1時) (レス) id: 573b4c2ac8 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - とても面白いです！たまにはいる挿し絵？も可愛いですね！ これはもう更新しないのですか？ まってます (2015年8月22日 23時) (レス) id: 016ebdc3e0 (このIDを非表示/違反報告)
Χ(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます。文章や言葉のチョイスに心を鷲掴みにされました。また随所で入るイラストも私にはドストライクで、この小説と出会えてよかったです。 (2015年8月16日 14時) (レス) id: ffefa26ae0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：宮前
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=miyamaenovels
作成日時：2015年2月9日 17時
