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第壱章 君は愛しいモノノ怪-05- ページ6

『す、すみません、助かりました』
男子トイレを出たあと、キヨさんに深く頭を下げる。




「なあ」

先ほど友人達と笑いあっていたのとは全く違う、冷え切った声。さてどんな説教を喰らうだろうかと身構えていたら、キヨさんの口から出た言葉は私の予想とは全く違っていた。






「お前、いつからこうなわけ」




『…へ、』

「いつから、こうやってモテるようになったかって聞いてんのさ」


聞かれて、記憶を巡らせる。人に褒められるようになったのは……確か。


『…一ヶ月、前になるかならないかですかね』


「なら、丁度辻褄が合うわ」

『辻褄…?』

「こっちの話」
キヨさんはスマホを取り出してどこかに電話をかけた。何かやり取りをした後、私の腕を掴む。

「腕、怪我してんね」

『え、…ああ』

「手当てするから俺の家いこ」

そんなことを言われても、警戒しないわけがなかった。何も疑わずに個室に入って襲われかけて、たまたま助けられたからといってじゃあ次は家へ、なんて考えられるほど私も馬鹿じゃない。

「別に、連れ込もうって訳じゃねえよ。ただあんたがこうなったのは訳がある。俺はその理由を知ってるかもしれない。それだけ」

来たいなら来れば。私が警戒していることに気がついたのか、キヨさんは私の腕から手を離して距離を取った。キヨさんの目は真剣で、決して下心があるようには見えない。

『…ここでは言えない話ですか』


「多分、言っただけでは信じてくれない話かな」

キヨさんは笑う。私にはどういうことなのかいまいち分からなかった。





*




「ここ」

2人でこっそり飲み会を抜けて、そのまま連れて来られたのはなんだかとっても豪勢な一軒家で。

『え、これキヨさんのご実家ですか?』

「別に、ただもらっただけ」

もらう、ってなんだ。突っ込みたかったが、キヨさんがあまりにも普通にそう言うもんだから何も聞けなかった。ガチャガチャと粗雑に鍵を開けて、キヨさんは扉をひらく。

「とりあえず傷の手当するか」

キヨさんはそのまま奥の扉へと進んだ。ガチャリと扉を開けると、3人の男性がリビングで寛いでいる。


「これ、さっきの電話の」

「ああ、この子が」
キヨさんと3人の青年はなにやら難しい顔をしている。

『あの、…なんですか?』

訳が分からずそう聞くと、キヨさんがこちらを向いた。









「単刀直入に言うわ。多分お前は"狐"に憑かれてる」






それを言うなら、狐につままれた、という表現の方が合っていた。

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赤の黒犬 - 昔の実況を見ていたら、キヨさんが夢を中々見ないと仰っていて、そこから来たのかなーとか考えられて凄く面白かったです。 (2021年7月1日 0時) (レス) id: ba80b57016 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - 平和組の皆さんが可愛すぎて泣ける!!この物語を見ていると引き込まれていくので時間が短く感じます!頑張ってください!! (2015年11月2日 0時) (レス) id: 4732783237 (このIDを非表示/違反報告)
咲嶋.ぼ(プロフ) - お話の構成がとてもしっかりしており、凄く引き込まれる作品で 大好きです。更新待っております。 (2015年9月9日 1時) (レス) id: 573b4c2ac8 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - とても面白いです!たまにはいる挿し絵?も可愛いですね! これはもう更新しないのですか? まってます (2015年8月22日 23時) (レス) id: 016ebdc3e0 (このIDを非表示/違反報告)
Χ(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます。文章や言葉のチョイスに心を鷲掴みにされました。また随所で入るイラストも私にはドストライクで、この小説と出会えてよかったです。 (2015年8月16日 14時) (レス) id: ffefa26ae0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:宮前 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=miyamaenovels  
作成日時:2015年2月9日 17時

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