第参章 貉は二度騙す-01- ページ21
｢帰れなんて言わねえよ、お前が居たい限りはな｣
悪夢にうなされてどうしようもなかった私にキヨさんは手をさしのべてくれた。私の中に狐がいることも、その対処法すらも教えてくれて、更には居場所を与えてくれた。
部長に襲われかけたときも、部屋に入られたときだって、いつだってキヨさんが一番に駆けつけてくれて、私を助けてくれるのだ。
そんなキヨさんに私は今、
――――――とても怒りを感じている。
*
｢Aちゃん、一番風呂どうぞ！｣
『あ、ありがとうございます』
キヨさん達の家に住まわせて貰ってから1週間ほど経った。
男所帯に女1人にも関わらず皆気を使ってくれて、一人で過ごすよりももっと過ごしやすい。
頂いた服も家具も、もし今後引っ越すことがあれば持って行っていいと言ってもらえた。
部屋だって今まで住んでいた1kよりよっぽど広い。
そして何より、一人暮らしでは勿体なくてできなかったが、この家では毎日お風呂を沸かしていると知ったときは感動してしまった。
…一人暮らしの間はもちろん、親戚に預けられていた時だって、私は温かいお湯の中で足を伸ばすことなんかできなかった。
いつのタイミングだったか一番風呂に入った記憶がないとポロッと皆の前で話した時、じゃあ気が済むまで入らせてあげようと口を揃えて言われて、申し訳なさとありがたさで泣きそうになった。
ただ、キヨさんだけは不満そうに私を睨んでいたけれど。
ガラリと引き戸を開けて、パジャマと替えの下着を持って脱衣所に入る。
今までは脱衣所なんてなくてユニットバスのトイレの蓋に着替えを置いて服を脱いでいたものだから、この違いに感動してしまう。
なんだかいきなり贅沢を許された召使の様で、こんなに幸せでいいのかしらと思う。
どん底から救ってくれたのも、私をこの環境に置いてくれたのも、全部あの4人だ。
どうすれば恩返しができるだろう。そう思いながら服を脱いでいく。つわはすさんから貰った数珠もこの時ばかりは外して服の上に置いた。
家賃もいらないから、と3人に言われてしまって、服代も家具代も受け取ってくれなくて。けれどそうやっておんぶにだっこでいつまでもお客様気分ではいられない。
どうすれば、何をすれば、私はこの家にいてもいいだろう?
その時はそのことで頭がいっぱいで、脱衣所の鍵を閉めたかどうかなんて気にも留めてなかった。
*
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赤の黒犬 - 昔の実況を見ていたら、キヨさんが夢を中々見ないと仰っていて、そこから来たのかなーとか考えられて凄く面白かったです。 (2021年7月1日 0時) (
レス) id: ba80b57016 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - 平和組の皆さんが可愛すぎて泣ける!!この物語を見ていると引き込まれていくので時間が短く感じます！頑張ってください！！ (2015年11月2日 0時) (レス) id: 4732783237 (このIDを非表示/違反報告)
咲嶋.ぼ(プロフ) - お話の構成がとてもしっかりしており、凄く引き込まれる作品で 大好きです。更新待っております。 (2015年9月9日 1時) (レス) id: 573b4c2ac8 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - とても面白いです！たまにはいる挿し絵？も可愛いですね！ これはもう更新しないのですか？ まってます (2015年8月22日 23時) (レス) id: 016ebdc3e0 (このIDを非表示/違反報告)
Χ(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます。文章や言葉のチョイスに心を鷲掴みにされました。また随所で入るイラストも私にはドストライクで、この小説と出会えてよかったです。 (2015年8月16日 14時) (レス) id: ffefa26ae0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：宮前
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=miyamaenovels
作成日時：2015年2月9日 17時
