第参章 貉は二度騙す-02- ページ22
キヨは悩みがなくていいよな、と周りの友達に言われることがある。
悩みがないのが悩みだわ、なんて返してきたけれど、最近誰にでもは言えないような悩みが出来た。
女が私的空間にいるという事実が、俺にとってかなりのストレスになるということを今ヒシヒシと感じている。
別にそいつが嫌いだというわけではない。俺が女自体を受け付けないだけだ。
「ただいま」
「おかえり」
玄関に入ってすぐ声をかければ、リビングにいるであろう3人の声が聞こえる。あいつはいないのか、と少しほっとして、急に寒くなったせいですっかり冷えた体を温めようと風呂場に直行した。
今思えば、この時間にあいつからの返事がなかったということを、もう少し訝しんでいればよかったのかもしれない。
ガラリと何も考えず脱衣所の扉を開けた瞬間飛び込んできたのは、
『…っへぇ!?』
「んあ!?」
一糸まとわぬあいつだった。
『あっ、ごめ、ごめんなさい!』
「すみませんッ!」
どちらともなく謝罪して扉を閉める。刹那、思い出される陶器のような白い肌。滑らかな曲線。その上にある膨らみ。
いや違う、今はそんなこと考えてる場合じゃない。ふるふると頭を振っていると、カラ、と扉が開けられてあいつが顔を覗かせた。
『キヨさんごめんなさい、ごめんなさい私、数珠つけてなくて、……大丈夫でしたか?』
バスタオルを纏ったあいつが、少しだけ恐怖を孕んだ表情でこちらを見る。
――――――…きっとそれは、狐の怖さを体験した上で出た言葉だろう。
決してこいつは自意識過剰なんかじゃないし、むしろ自分を低く見すぎている、とP-Pやらレトさんが言っていたような気がするのも覚えている。
けれど今まで女性の汚い部分を見てきた俺にとって、その言葉は反吐が出るものだった。
弱い立場だからと言ってすぐに被害者面して、まるでこちらだけが悪いみたいな態度で。
そう思った時にはもう、言葉はあいつに突き刺さっていた。
「お前ごときに誰が欲 情するかよ、ブス」
言い過ぎた、なんてのは言い終わった後に気づくものだ。
歪みそうになった顔を必死に堪えて、涙でいっぱいになったその瞳を伏せた後あいつはゆっくりと扉を閉めた。
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赤の黒犬 - 昔の実況を見ていたら、キヨさんが夢を中々見ないと仰っていて、そこから来たのかなーとか考えられて凄く面白かったです。 (2021年7月1日 0時) (
レス) id: ba80b57016 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - 平和組の皆さんが可愛すぎて泣ける!!この物語を見ていると引き込まれていくので時間が短く感じます！頑張ってください！！ (2015年11月2日 0時) (レス) id: 4732783237 (このIDを非表示/違反報告)
咲嶋.ぼ(プロフ) - お話の構成がとてもしっかりしており、凄く引き込まれる作品で 大好きです。更新待っております。 (2015年9月9日 1時) (レス) id: 573b4c2ac8 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - とても面白いです！たまにはいる挿し絵？も可愛いですね！ これはもう更新しないのですか？ まってます (2015年8月22日 23時) (レス) id: 016ebdc3e0 (このIDを非表示/違反報告)
Χ(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます。文章や言葉のチョイスに心を鷲掴みにされました。また随所で入るイラストも私にはドストライクで、この小説と出会えてよかったです。 (2015年8月16日 14時) (レス) id: ffefa26ae0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：宮前
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=miyamaenovels
作成日時：2015年2月9日 17時
