第参章 貉は二度騙す-04- ページ24
『きら、嫌いになんて、ならないです』
「ほんと? もうこんな家嫌だって、思ってない?」
依然としてキヨさんはしおらしい表情で私の様子をうかがってくる。
先ほどまでとは違いすぎるその態度に、思わず目が泳いでしまう。
待て、待ってよ、…キヨさんは私にこんな顔を向けるような人だったっけ?
こんなに人の顔色を窺うような人だったけ?
けれど生まれた違和感はすぐにキヨさんの大きな瞳に吸い込まれて消えた。
今なら言えなかったことも言えるような気がして、口を開く。
『…私、私は、嬉しかったです。キヨさんに、皆さんに拾ってもらえて、』
「ほんと……?」
キヨさんが私の顔を覗き込む。私は目線を逸らせない。
『あの、キヨさん、私』
「…おい! 何してんだよ!」
「いッだ!」
後ろからキヨさんの声が聞こえた瞬間、目の前のキヨさんの頭に拳骨が降ってきた。驚いて声の主を見れば、そこにはキヨさんが立っている。
…………何を言っているんだ、私は。
「お前もP-Pに騙されてんじゃねえよ!」
そう言ったのは握り拳を掲げている方のキヨさんで。
じゃあ私の手を握っていたキヨさんは、と視線を移してみればキヨさんがいたはずの場所にはP-Pさんが頭を抱えて座っていた。
『、な、あ、…え?』
「あーあ、ばれちゃった」
P-Pさんが残念そうにそう言って、ごめんねと呟いた。
「だってキヨ君のせいでAちゃんが出ていったら困るじゃん」
「だからって俺に化けてそんな媚びるような真似、やめろ!」
キヨさんはP-Pさんを睨んでから、私を見て居心地悪そうに目を逸らした。
「易々と騙されてんなよ、バカ」
それだけ言ってキヨさんはそそくさとリビングを後にしてしまう。
「あれ、もしかして僕のせいでキヨ君謝るタイミングなくしちゃったかな?」
悪いことしたなあ、とまるで悪びれずにP-Pさんが言った。
『あの、今のもしかして貉、…ですか?』
「そ、僕のモノノ怪。どう? 分かんなかったでしょ」
嬉しそうにそう聞かれて素直に頷く。
『キヨさんがいきなり変になったと思いました…』
言えば、P-Pさんは大口を開けて笑った。
「そっか、僕もまだまだねえ」
『というか、私キヨさんに嫌われているので、こんなに目を合わせて会話してくれたこと今までなかったから違和感だったんだと思います…』
声に出すことによってより自覚してしまった悲しい現実を受け止めきれずに俯くと、P-Pさんがううんと唸った。
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赤の黒犬 - 昔の実況を見ていたら、キヨさんが夢を中々見ないと仰っていて、そこから来たのかなーとか考えられて凄く面白かったです。 (2021年7月1日 0時) (
レス) id: ba80b57016 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - 平和組の皆さんが可愛すぎて泣ける!!この物語を見ていると引き込まれていくので時間が短く感じます！頑張ってください！！ (2015年11月2日 0時) (レス) id: 4732783237 (このIDを非表示/違反報告)
咲嶋.ぼ(プロフ) - お話の構成がとてもしっかりしており、凄く引き込まれる作品で 大好きです。更新待っております。 (2015年9月9日 1時) (レス) id: 573b4c2ac8 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - とても面白いです！たまにはいる挿し絵？も可愛いですね！ これはもう更新しないのですか？ まってます (2015年8月22日 23時) (レス) id: 016ebdc3e0 (このIDを非表示/違反報告)
Χ(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます。文章や言葉のチョイスに心を鷲掴みにされました。また随所で入るイラストも私にはドストライクで、この小説と出会えてよかったです。 (2015年8月16日 14時) (レス) id: ffefa26ae0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：宮前
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=miyamaenovels
作成日時：2015年2月9日 17時
