第弐章 物の怪に罹る-02- ページ15
母は、早くに両親をなくしている。
一回り以上年の離れた弟を養いながら奨学金で大学まで出た母は、そこで当時大学助教授だった父と出会ったそうだ。
みなしごコブツキの母を、父の親戚はひどく嫌っていた、とぽつりぽつりと母が話してくれたのを覚えている。
母と十六も歳が離れていたと言う叔父が今何をしているかはわからない。私がまだ幼い頃に就職のため地方に移ったそうだ。ただ母よりも私の方が年が近かったこともあってか、幼い頃はよく遊んでもらっていた記憶がある。
叔父は母の葬式にも来なかった。それをまた父の親戚がちくりちくりと遠回しに侮蔑していた。
父方の親戚にも頼れなければ、叔父にも頼れない。自分ひとりで頑張っていくしかない。
寮の管理人さんに相談して、鍵を変えてもらおうか。引っ越しの代金はなくても鍵を交換するお金くらいは捻出できるかもしれない。
洋服は…買い直すしかないだろう。友達に事情を話せばいらない古着をもらえる可能性だってある。
よそった味噌汁をテーブルに置くと、キヨさんがご飯と焼き魚を置いてくれる。私たちは向かい合わせに座ってご飯を食べ始めた。
*
『一宿一飯のお礼は、改めてさせていただきます』
｢おー、さっさと実家に帰れ｣
律儀に玄関まで送ってくれたキヨさんは鬱陶しそうにシッシと手を払う。
きっとこれはキヨさんなりの優しさなのだろう。実際、私のような特殊なケースでなければ健全な子供は親のしてくれることに感謝すべきで、折り合いが悪いなんて理由で無理をしてまでも一人暮らしをする必要はないのだ。
踵を返して駅へ向かう。
親戚の家へ行くという選択肢は私にはない。学生寮へ向かうのだ。キヨさんには悪いけど、この数珠で狐の力が抑えられるならまたあそこで暮らしていても問題はないはずだ。
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赤の黒犬 - 昔の実況を見ていたら、キヨさんが夢を中々見ないと仰っていて、そこから来たのかなーとか考えられて凄く面白かったです。 (2021年7月1日 0時) (
レス) id: ba80b57016 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - 平和組の皆さんが可愛すぎて泣ける!!この物語を見ていると引き込まれていくので時間が短く感じます！頑張ってください！！ (2015年11月2日 0時) (レス) id: 4732783237 (このIDを非表示/違反報告)
咲嶋.ぼ(プロフ) - お話の構成がとてもしっかりしており、凄く引き込まれる作品で 大好きです。更新待っております。 (2015年9月9日 1時) (レス) id: 573b4c2ac8 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - とても面白いです！たまにはいる挿し絵？も可愛いですね！ これはもう更新しないのですか？ まってます (2015年8月22日 23時) (レス) id: 016ebdc3e0 (このIDを非表示/違反報告)
Χ(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます。文章や言葉のチョイスに心を鷲掴みにされました。また随所で入るイラストも私にはドストライクで、この小説と出会えてよかったです。 (2015年8月16日 14時) (レス) id: ffefa26ae0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：宮前
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=miyamaenovels
作成日時：2015年2月9日 17時
