第壱章 君は愛しいモノノ怪-00- ページ1
綺麗になったね、と最近よく言われるようになった。
大学生になって化粧を覚えたからだろうか。けれど褒められるようになったのも二回生になってからの話なので、そういうわけでもないのかもしれない。別に恋愛をしているわけでもない。何か生活が一新されたわけでもない。本当に何もないのだ。
むしろ日々の学費を支払うために大学とバイトを行き来する毎日で、見た目を気にしていられる程の余裕はなかった。
いくら国立の大学とはいえ小娘一人で半期分の授業料と生活費と学生寮の寄宿料を稼ぐのはやはりいささか骨が折れるというもので。
…両親が死んでから、父方の親戚に預けられていた8年間は決して楽しいものとは言えなかった。
かかる食費、生活費、全て親の遺産で賄われていたもののいちいち小言が飛ぶ。
研究者だった両親が遺してくれていたそれは、一般的な額としては多い方だったと世の中を少し知った今ならわかる。
きっと家を出るまでの8年間で、私のために全て使い切ってしまったはずはない。
ただもちろん、自立したからと言って残りのお金が手渡されるなんてそんな夢みたいなことよもや私ですら思っていなかった。
それほどに私は、彼らから――――――…誤解を恐れずにいうなれば、虐げられていた。
時にはその頭脳を、容姿を、身寄りのない自分自身を、チクリチクリと心臓に針を刺すように馬鹿にしては歪む彼らの顔を見たくないという思いだけが、この忙しい日々を受け入れられる唯一の理由だった。
だからだろうか、いくら周りにその容姿を褒められても、言われ慣れた雑言と忙しい毎日からそれを本気にすることはなかった。
ただ理由こそわからなかったが、見た目にあまり執着しない性質とはいえ褒められればやはり嬉しい。
最初は私もそう思っていた。
*第壱章 君は愛しいモノノ怪*
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赤の黒犬 - 昔の実況を見ていたら、キヨさんが夢を中々見ないと仰っていて、そこから来たのかなーとか考えられて凄く面白かったです。 (2021年7月1日 0時) (
レス) id: ba80b57016 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - 平和組の皆さんが可愛すぎて泣ける!!この物語を見ていると引き込まれていくので時間が短く感じます！頑張ってください！！ (2015年11月2日 0時) (レス) id: 4732783237 (このIDを非表示/違反報告)
咲嶋.ぼ(プロフ) - お話の構成がとてもしっかりしており、凄く引き込まれる作品で 大好きです。更新待っております。 (2015年9月9日 1時) (レス) id: 573b4c2ac8 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - とても面白いです！たまにはいる挿し絵？も可愛いですね！ これはもう更新しないのですか？ まってます (2015年8月22日 23時) (レス) id: 016ebdc3e0 (このIDを非表示/違反報告)
Χ(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます。文章や言葉のチョイスに心を鷲掴みにされました。また随所で入るイラストも私にはドストライクで、この小説と出会えてよかったです。 (2015年8月16日 14時) (レス) id: ffefa26ae0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：宮前
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=miyamaenovels
作成日時：2015年2月9日 17時
