. ページ4
.
「ん？オリオン座っていうのは、あの砂時計みたいな形のやつやで。見える？」
「見えないよー。お兄ちゃん、抱っこー！」
「よい、しょっと。どう？見えた？」
ここに居れば、いつかはまた出会えると。そんな何の確信もないことを強く心に持ちながら、私は今まで過ごしてきた。
一度だって忘れたことはない。
名前も、顔だってよく覚えていないけれど、声だったり、雰囲気だったり、仕草だったり。
「だからー。あの、砂時計みたいな形のやつやで」
私は、一度だって忘れたことはなかった。
「あ、わかったー！すっごーい！お兄ちゃん、ありがと！」
「いえいえ。それは良かった」
そう言って、小さく微笑みながら子供を降ろす男性を、放心状態になりながら私は呆然と見つめていた。
「お兄ちゃん、またね！」
「はーい、またねー」
そう言って、目を細める彼の姿から、私は目を逸らすことができなかった。
そんな私の視線に気が付いたのか、彼は小さく首を傾げる。ふわりと揺れる、茶色の髪。
色白で、華奢な体。穏やかな雰囲気。
間違いない。彼だ。何の確信もないけれど、何故だかそうだと思ってしまった。そうに違いないと。
そんな事実、誰にも分からないのに。
いつか、もし出会えた時の為に何度もシュミレーションをしていた。脳内では完璧だったはずなのに、実際いざ目の前にすると頭の中が真っ白になるというのはこのことか。
思うように言葉が出ず、拳をきゅっと握りしめたままただ彼を凝視していると、一方の彼の表情は益々怪訝になる。
１０年間、ずっと心の奥に秘めていた少年。ずっと、会いたいと切願していたあの頃の彼。
「あの…何か用ですか？」
相手も私のことを覚えているなどと、一体何の確証があったのか。
世界が、真っ暗になり、私は暫くそこで立ち竦んでいた。
「…おい、智洋。こんなところで何して……、」
そんな私たちの間に入ってきたのは、先程私の手伝いをしてくれた同じ職場の重岡さん。
私はゆっくりとそちらに首を回し、少し驚いたように目を丸める彼と目が合う。と言っても、前髪に隠れてよく見えないのだが。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1527人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズWEST」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
葉月(プロフ) - しげええええええ泣 (2018年1月22日 22時) (
レス) id: 976831957c (このIDを非表示/違反報告)
クリームパン(プロフ) - 完結おめでとうございます！！！もう最後の最後まで感動しました泣なんて素敵な作品なんでしょうか、こんな作品を読めてもう幸せですっ！これからも応援してます！！ (2017年12月22日 17時) (レス) id: 69d39ba2c0 (このIDを非表示/違反報告)
ありさか - 藤井さんの小説からまた来ました ！！！ とても楽しみにしてます（ ; ; ） (2017年10月24日 23時) (レス) id: f77e20ba12 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みやび
| 作成日時：2017年10月24日 5時
