#58. 御 side ページ8
あの大学生がつまみ出された際に落としたガラケー
倉持がAの様子を見に行っている間に近くに行き、拾い上げた。
色々操作をしていると何か嫌な予感がした。胸を触るような奴だ、他の出店でもなにかしていたら先生にチクってやろう。
そう思い、画像フォルダを開く。案の定他のクラスの店でも盗撮や強要したであろう画像ばかり。
その中には男も混ざっており、次々と画像を流し見ていると俺らのクラスであろう場所の写真が。
1枚、2枚と進めるとAの画像が出てきた。
撮影スペースで撮ったであろう6人の写真、次に出てきた物は目を疑った。
あまり詳しく例えたくないが…こいつも強要されたであろう写真。笑顔が一切なく、淡々としていた。
グラビアと同じポーズ、そして最後は眉をひそめて涙目でキスをしているAと、1人1人の写真。
一瞬見ただけで脳裏に焼き付くほど衝撃が凄かった。
直ぐに全ての画像を削除、ガラケーを閉じてその場に落とした。アイツら5人はもう居ない、Aの写真は消したが他にも危ない写真ばかり。自撮りもしていたし、見つかったら捕まるのは免れないだろう。
そのまま自分の教室の前に戻ると、丁度倉持が倉庫から戻ってきた。少し俯き気味で俺の隣に並んだ倉持、耳とうなじが真っ赤に染まっていた。
「暑かった？」
「えっ、いや、全然」
「へぇ」
焦りながら答える倉持、絶対何かあったなと俺の勘が働いた。
▽
学祭は終了、制服に着替えて3人一緒に倉庫で寝ていると先に起きたAに起こされた。
制服に着替えたA、倉庫から出て衣装は遊び道具にでもと倉持にあげていた。
『…』
「なぁ」
黙って窓の外を眺めているA、俺ら2人の間に少し距離があるように感じられる。
『ん？』
「…お前、なんかあったろ」
『例えば？』
「学祭の接客中。あの大学生」
俺がそう問いかけるとすぐに口を噤んでしまった。
涼しいはずの教室、それも窓際に立っているのに冷や汗が頬から首へと伝っていくのが確認出来た。
焦っている、なにか隠している。俺はもう分かっているのに隠そうとして可愛い奴。そしてこんなに長くいるのに教えて貰えないのかと少し不満もあった。
Aに近付き、手を伸ばすと力いっぱい目を瞑る。どこか脅えている様子で、肩を竦めて。
そんなAの頬を引っ張り、少しばかり緊張を解いた。
『…なんで、知ってんの』
「誰よりもお前の事気にして見てるから」
『…ごめん』
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作者名：宮
| 作成日時：2022年8月3日 1時
