【 ◇のA 】捕手と遊撃手と帰宅部と。 Ⅱ【男主】 (ページ5)

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#55. ページ5

この撮影スペースはそこそこの広さを取っている。
そして、しっかり仕切られており、外からはほぼ中が見えない。
それが一目見て分かったのだろう。

俺に対する要求はエスカレート。そんな直接的な要求は無かったが、椅子に足を立てて座ってくれだの、余った机に乗って足を出してくれだの。
1番ドギツかったのは1人1人の首に腕を回して口付をせがまれた事。それもよりによって深いのだ。

これをしたら帰ってくれる、そう言った為俺はしっかりやってあげた。俺の精神はズタズタ。初キスだったのにと肩を落とす。

そして受け取った額は10万。こいつはやばい。受け取り、一旦ポケットにしまって撮影スペースからようやく解放。

「いやー、楽しかったよ」

そう言ってレジで料理の支払いもし出ていった大学生。隣のクラスのお化け屋敷へと入っていった

その時、レジの奴が撮影に呼ばれその場から離れた。今は周りに人がいない、その隙を狙い急いでレジに受け取った10万を突っ込んだ。
そしてそのまま荷物を置いている小さい空間の倉庫へ。

必ず廊下を通らないといけない、教室から出ると案の定2人に話しかけられ顔も合わさずに歩を進める

『サボる』

「え、いきなりなんでだよ」

「おいA！」

2人の声を無視し、倉庫の中へと入り隅で三角座り
口の中が気持ち悪い、濯げばよかった。けどもう今から外に出たくない。少し埃っぽく、かび臭いこの場所で残りの時間を過ごそうと壁に寄りかかる。売上の為とはいえこんなになるなら体張るんじゃなかった

自分の事は自分が1番分かっている、なんて言うが、分かっているから無茶はするし、なんなら周りの方が分かっていて、自分自身が分かっていないのが殆ど。
だから注意力散漫にもなる。先程までがそうだった。

俺の事だって御幸と倉持の方がよく分かってくれている
はぁ、と1つため息をついたと同時に倉庫の扉が開いた

「A！さっき来た大学生居ただろ」

倉持だ。
少し着崩した衣装、扉を閉めて楽しそうに笑いながら俺に近付いてくる。
しゃがんで目線を合わせ、とある事を報告してくれた。

「隣のクラスがお化け屋敷してるんだけどよ、お化け役の女子の胸触って摘み出されたんだと。先生達総出で引きずってったぜ！」

ヒャハ、と思い出しては笑い楽しそうにしている。
そんな彼を俺はじっと見て『はは、』と相槌を打つように笑った。

口、気持ち悪い。飲み物持ってないし。そう思っていると無意識に倉持の両頬に触れていた。