#73. ページ23
まだまだ寒い日が続く。吐く息は真っ白で、鼻も耳も冷たくなっている
ただ、体は普段よりも暖かい。2人がくれたインナーとパーカーのおかげだ。
もうすぐ冬休み、外に出る回数は減るだろうけどこの服を着る回数は減らないだろう。重宝している。
「あれ、外にいるの珍しい」
朝練終わり、皆が着替えている中制服姿の亮さんが俺に気付いて近付いてきた。
確かにこの人の言うとおり珍しいだろう、冬の間朝練はほぼ見に来ていなかったから。
『今日は着込んでて。暖かいから見てようかなって思いまして。』
「へぇ、…指真っ赤」
『…はは。手袋もカイロも忘れてて』
「…。そういえば、これ。俺もう使わないからあげるよ」
思い出したかのようにそういい、制服のポケットから取り出してきたのはまだ揉んでも振ってもない綺麗なカイロ。
手渡されたが温かくない、きっと袋から出してすぐの新品なのだろう。
『いいんすか』
「いいよ。そんな手じゃまともに動かないだろうし」
『亮さん好き…』
「そんなこと言う暇あったら忘れ物無くす努力しようよ」
『……ご最もです。』
ニコニコと変わらない表情、いきなりの毒舌にただただ頷くしか無かった。
亮さん達3年はもう野球部を引退。俺の知らない間に御幸がキャプテンになっており引っ張っていっている。
亮さん達も多分ずっと見てたんだろうなと少し笑みがこぼれてしまう。
「2人待ってるの？」
『そうなんですけど…遅くて。先に行ってようか迷い中です』
「じゃあ俺と途中まで行く？話し相手くらいにはなれるでしょ」
『亮さん…！一緒行きます！』
さっさと先を歩いていく亮さんの後を追い、隣に並んでウキウキで歩く。
今日は体育がある、だの冬休みは何をする予定なのか、だのと色んな話を展開させていく。先輩と話すのは同級生とはまた違う雰囲気があって新鮮だ。
楽しいし、少し気を遣いながらも色んな事を教えてくれる。
「じゃあまた」
『また一緒に行きましょうね…！』
「普段外でないくせに」
はは、と軽く笑った亮さんはそのまま教室がある3階へ続く階段をのぼっていく。
その背を少しばかり眺め、見えなくなると自分も教室へと戻って行った。いつものように『おはよー』と挨拶から始まる学校生活。
「2人は？」
『多分来てるんじゃない？遅かったし寒くて戻ってきた』
「本当寒いの苦手だよな」
『苦手。だけど亮さんからカイロ貰ったからあったかい』
「いつの間に3年とも…。」
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作者名：宮
| 作成日時：2022年8月3日 1時
